テーマ:意外な戦記を語る(748)
カテゴリ:潜水空母・伊401
(カモメ)当時一般の飛行機はマグネットの磁気コンパス装備が普通でしたが、潜水艦は艦自体が鉄の塊なので磁力線の影響を受ける訳です。
(ウツボ)そうだね。さらに、晴嵐は魚雷や爆弾を積むのでこれだけでも磁気コンパスは大きく狂い、赤道直下では水平に作動するものの、南極や北極では使い物にならなかった。 (カモメ)そこで当時大型機だけが使用していた、高価ではあるが磁力線の影響を受けない、ジャイロ・コンパスを使用したのですね。 (ウツボ)ところで速度だが、晴嵐は単発複座でフロート装着の水上機だ。最大速度は時速四七四キロ、フロートを投下したら時速五六〇キロも出る。これはゼロ戦と同じくらいの速度だ。 (カモメ)武装は一三・二ミリ旋回機銃一基装備。爆弾は八〇〇キロ一発、または二五〇キロ四発、または九二式改三航空魚雷(四五センチ)一発装着できます。 (ウツボ)乗員は二名。エンジンは愛知「熱田」三二型で離昇出力一四〇〇馬力。航続距離は一五四〇キロ。実用上昇限度九六四〇メートルだ。 (カモメ)晴嵐は大型爆弾を搭載した実戦の場合は、フロートを装着しません。帰還は潜水艦近くに胴体着水または搭乗員を落下傘降下させて収容します。 (ウツボ)晴嵐は当初の計画では、昭和十九年に四十四機、二十年には三十四機の生産が要求されていたが、実際に完成したのは十八年に一機、十九年に十機の全部で二十八機に過ぎなかった。 (カモメ)現在は米国ワシントンDCのスミソニアン博物館に一機展示されていますね。 (ウツボ)「米機動艦隊を奇襲せよ」(南部伸清・二見書房)によると、晴嵐がようやく潜水艦に搭載され、射出訓練ができるようになったのは昭和二十年三月だった。 (カモメ)なれない水冷エンジンや分解組み立てなど、整備や始動に苦心の多い晴嵐でしたが、性能は良かった訳です。伊四〇一の飛行長・浅村敦大尉(海兵七〇)は晴嵐について次の様に述べています。 (ウツボ)読んでみよう。「私は専門が二座式水上偵察機の操縦であって、九五式水偵、零式観測機、零式水上戦闘機などを操縦してきたが、晴嵐は従来の飛行機に比べて最新鋭といってよく、その装備も時の航空機としてはトップレベルではなかったかと思う」 (カモメ)続けて読んでみます。「水上艦艇でさえ全部は持っていなかったジャイロコンパスまで装備されていた。このように従来の、どちらかといえば練習機に毛の生えたような小型偵察機とは全く異なり、晴嵐は空母搭載の攻撃機、爆撃機にも匹敵する飛行機だった」 (ウツボ)潜水空母の格納庫の中には、爆弾や魚雷を抱いたまま翼をたたみ、晴嵐三機が滑走車に載せられたまま設置されていた。フロート(浮舟)はずされていた。 (カモメ)前方から一番機、二番機の順に格納してあり、天井に三番機のフロートが吊るされており、最後に三番機が格納されていました。 (ウツボ)主格納庫の下側に左右二本のフロート格納筒があり、主格納庫と同様な形式の水密扉で閉じられ、それぞれ二本ずつ一番機と二番機のフロートを格納してあった。 (カモメ)射出訓練は瀬戸内海で行われましたが、射出のため浮上している時間が多いため、特殊な潜水艦であることを隠すために、煙突らしいものを取り付けて、水上艦艇のようにカムフラージュしました。 (ウツボ)それができるほど従来の潜水艦とは外形が異なっていた。少なくとも駆逐艦が走っているくらいには見えた。 (カモメ)伊四〇〇型は晴嵐を三機格納していますが、射出訓練は、当初、一、二番機の発進は当時としてはかなり早くて約四分、三番機の場合は約十五分を要し、全機発進に約二十分を要する状況でした。 (ウツボ)潜水艦が浮上してから三機発進終了まで二十分もかかるようでは、とうてい満足な作戦ができない訳だ。それで、その後、整備員の血のにじむような訓練と努力の結果、所要時間を十分に短縮することができた。 (カモメ)訓練のときはフロートをつけるが、実戦の時は大きな爆弾を抱えるので、フロートをつけない計画だったから、三機連続射出十分以内は確実となったのですね。 (ウツボ)そう。一方、晴嵐は複雑な飛行機だったので故障も多く、整備員を悩ませた。だが、整備員の努力と訓練で乗り切った。 (カモメ)昭和二十年三月、戦況はますます不利になってきました。二月三日、米軍はマニラ市内に進攻、サイパン、テニアンからB29による本土空襲は激しくなりました。 (ウツボ)そうだね。三月十日未明にはB29一二〇機が東京をじゅうたん爆撃、死者二一四〇〇余名、行方不明多数を出した。焼失家屋は二三三〇〇〇戸を超えた。 (カモメ)また、三月十九日には呉軍港大空襲がありました。米艦載機グラマンF6Fが約三百五十機、呉軍港碇泊中の軍艦や、呉工廠、広工廠、呉空などの軍事施設に爆弾を投下しましたね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.08.15 09:20:20
[潜水空母・伊401] カテゴリの最新記事
|
|