テーマ:意外な戦記を語る(748)
カテゴリ:潜水空母・伊401
(カモメ)開戦時、南部艦長は、伊一七の先任将校で、米国本土のエルウッド油田に十二センチ砲弾十七発を撃ち込んだ戦歴がありますね。
(ウツボ)また、艦長として指揮した伊一七四ではオーストラリア東海岸の通商破壊戦や輸送作戦を、伊三六二ではナウル島の輸送作戦を行った歴戦の勇士だった。 (カモメ)伊一三の艦長・大橋勝夫中佐は開戦時、伊一五六の艦長としてインドネシアのジャワ島方面の作戦に当たり、次いで伊一八一、伊五四の艦長をつとめました。 (ウツボ)伊一五六は昭和十七年三月八日、洋上で敵の救命ボートに遭遇した。この救命ボートは、ジャワ島のジリジャップを脱出したオーストラリアとイギリスの混成の爆撃隊員十二名だった。 (カモメ)そうですね。彼らは武器を持っていなかったので、大橋艦長は「ジャワは落ちたんだ。戦況に変わりはない。無用の殺生はやめよう」とこの救命ボートを見逃したそうです。 (ウツボ)それから四十二年後の昭和五十九年、オーストラリアの戦史家ロバート・K・パイパー氏が、攻撃せずに見逃してくれた恩人を探そうと来日した。 (カモメ)当時の毎日新聞によると、もはやこれまでと覚悟した十二名は命拾いし、雨水を貯めながら約二千四百キロ離れたオーストラリアのパース付近四十四日間かかって、たどりついたのですね。 (ウツボ)オーストラリアではこの脱出行が話題になり、新聞にも掲載された。だが、日本側の艦長や乗組員が分からなかったので、パイパー氏が調査のため来日、その結果、伊一五六の大橋艦長と分かった。 (カモメ)当時の伊一五六の乗組員によると、ボートを発見した時艦内では、「敵兵だ、殺るか」と騒然としたが、大橋艦長がこれを押さえて救命ボートを見逃したのです。 (ウツボ)大橋艦長は帰国した時、「ゴムボートで逃げる敵兵を発見、撃とうとしたが、よく見ると武器を持っていなかったのでやめた。いくら戦争でもフェアにやらなきゃ」と語っていた。 (カモメ)だが、その大橋艦長は、伊一三の艦長になり、昭和二十年七月、トラック島に向って大湊を出撃した直後、アメリカ艦隊の襲撃を受けて、沈没、消息を絶ちました。 (ウツボ)残念だね。戦争は皮肉なものだね。次に、伊一四の艦長・清水鶴造中佐は軽巡洋艦、駆逐艦など乗り組みの後、潜水艦に乗り組んだ。三隻の潜水艦の艦長をつとめた。 (カモメ)清水中佐が伊五六の艦長だったとき、インド洋でイギリスの輸送船三隻を撃沈しました。昭和十九年には、アメリカの駆逐艦の攻撃で艦が破損したが、運良く沈没をまぬがれています。 (ウツボ)このように第一潜水隊、潜水空母部隊の各艦長は歴戦の優秀な士官ばかりだった。 (カモメ)そのころ、第六艦隊首席参謀・井浦大佐は、有泉司令とパナマ運河攻撃計画について研究を進めていたのですね。 (ウツボ)そうだね。軍令部の潜水艦主務参謀・藤森康男中佐(海兵五六・海大三八)や情報部の実松譲大佐(海兵五一・海大三四)も井浦大佐の研究の援助に当たった。 (カモメ)当時、アメリカ海軍は太平洋艦隊と、大西洋艦隊の二艦隊を編成していました。だがパナマ運河は巨大な戦艦は通行できなかったのですね。現在でも大型の空母はパナマ運河を通行できません。それ以外の艦船は通行できるのですが。 (ウツボ)だが、パナマ運河は米国にとって極めて重要な二つの価値があった。一つは、米国が大西洋艦隊を必要に応じて、随時、迅速に、太平洋に回航させることができることだ。 (カモメ)そうですね。もう一つは太平洋全域に布陣する米軍に補給する膨大な戦略物資を迅速に、輸送することができることですね。 (ウツボ)事実、当時、米国の戦略物資のほとんどは米国本土東海岸からパナマ運河を経て太平洋側に輸送されていた。 (カモメ)だから、ドイツが降伏したら、大西洋に作戦中の連合艦隊艦艇は、大挙して太平洋に出てくるだろうと予想された訳です。 (ウツボ)この場合、もしパナマ運河を爆撃して閉塞すれば、少なくとも三ヶ月は連合軍の太平洋集中を遅らせることが出きるかも知れないと日本海軍は考えた。 (カモメ)具体的にはニューヨークとハワイ間の距離は、パナマ運河を経由すれば六二〇〇海里ですが、南米を迂回すると、マゼラン海峡を抜けても、一三〇〇〇海里以上ですね。 (ウツボ)船団の平均速力を十四ノットとしても、二十日以上の差が出る。しかも長途の航海となると燃料消費は膨大な量になり、少なからぬ給油船を随伴しなければならなくなる。 (カモメ)そうですね。そうすると、運航速力が低下しますね。日本海軍にとっても潜水艦による攻撃が容易になり、一石二鳥の効果が期待できます。 (ウツボ)昭和十九年一月、藤森参謀はパナマ運河の元警備兵だった者が捕虜となって大船収容所に入っているとの情報を得た。それで、パナマ運河の警備状況を訊問することになった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.08.15 09:18:57
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