いつくしむひと
インド舞踊・オリッスィーの踊り手、福島まゆみ先生の舞台を観にいく。 股関節の病を経る以前の踊りもすばらしかったけれど、病を経て、立って踊ることがかなわない時間を過ごして、お寺で開催された今日のオリッスィーは、本当にうつくしかった。 撮影はかなわず、みなさんにご紹介できないことだけが残念なほどに、まゆみ先生の舞う姿は、今日のテーマでもある「お釈迦様」のように、うつくしかった。 他にどんな言葉も見つからない。 ひとりのひとの中に、よろこびも、怒りも、怒りの末の悲しみも、自分と世界をつなぐ作業を重ねることの尊さも、みんな内包して、いまこうして踊っているまゆみ先生から伝わるひかり。 お釈迦様は、いつくしみの気持ちを持ってひとと触れ合う、それが「悟り」とおっしゃったそうだけれど、再び立って踊り始めたまゆみ先生から、いつくしみが雨のように、オーロラのひかりのように、あの空間にいるわたしたちを温かく濡らし、抱いてもらっているような、稀有ないただきものを授かったような、そんな気持ちで満たされていた。 尊いとか、いつくしみとか、それをひとりのひとがいまこうして表現している。 それに出会うことのできた、奇跡。 白いドレスに、白い髪かざりのまゆみ先生はしっとりとうつくしくて、このひとに巡り会えてあぁよかったと、先生の手を握りながら思った。 終わって帰る前にまゆみ先生と直接お話できたのだけれど、先生の前に自然に手を合わせてしまう自分の心が、おお、これが素直さというものなのかもしれない、と何度も感じた。 まゆみ先生、ありがとう。 ただただ、ありがとう。