テーマ:海外生活(7771)
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毎朝のことなのだが、早朝から看護婦たちがドヤドヤと病室になだれ込んでくる。
患者たちは叩き起こされ、注射を打ち、脈を計って、用も足したくなくてもお尻の下に例の「パデッラ」を押し込まれ、有無も言わさず、お股の間をぬるま湯で洗われるのである。 何度も書くが、看護夫にそれをされた時ほど恥ずかしいものはない。涙 この日は手術の次の日、というのもあってわたしは弱っていた。 後からおっとに知らされたのだが、左足の手術跡からチューブが出ていて大量の血が床に置かれたポンプに溜まっていたらしい。 しかしこの日もいつもの上記の儀式が乱暴に行われ、そのすぐ後の朝食の時にまるでバネの様にベッドの上半身を起こされたのが効いて、低血圧のわたしはまたたくまに激しいめまいと吐き気による貧血を起こして、看護婦を騒がせた。 前日の手術直後と同じ状態に帰って、ぐったりとなってしまったのだが、そんなことにおかまいなく大先生の回診行列が来たのである。 大先生はカルテを看護婦長に読ませて「ああ、昨日手術をしたのか。じゃあ。。。」といろいろなことを言っているのだが、意識が朦朧としたわたしには1km先で何かを言っているかのごとくわからなかった。 ただ最後に「。。。というわけで、これをつけるなら有料だよ。」という言葉だけが「極貧」がすっかり染み込んでしまったわたしに敏感に反応した。 「お、おいくらなんですか?」と何かもわからないのに聞いた。 看護婦長「250ユーロ。」 げ!高い。なんだ??いったい何の事だ!? 問い返す元気もないうちに大先生の回診行列は去っていった。 気分が回復した後、看護婦が来た時に聞いてみた。 看護婦「ああ、それはきっとドンジョイのことね。」 ドンジョイとは石膏ギブスに代わるウレタン性の軽いギブスらしい。石膏ギブスなら無料らしいが、これはまさに岩を足にまとっているようなもので重い事この上ない、重すぎてひ弱なわたしはびくとも動かす事が出来ない。しかしたった2ヶ月ぐらいの治療の為に250ユーロも払えないなあ。。。 ベッドの上で買うか買わないかで、悶々としているとおっとから携帯にメッセージが入った。「今日はコックさんとウイリアム一家を家に招待したから、お見舞いに行けません。」 なんだって!? ジェラシーとも、怒りともつかぬものが込み上げた。 家で独りで寂しいのはわかるさ、何も耐えろ、とは言わない。 けどなんで、わたしがいないときに限って、家でどんちゃん騒ぎをするんだよ!? しかも、そのためにお見舞いに来れないって。。。 この日、土曜日は入院患者の家族たちは平日以上にたくさんお見舞いに来ていて、みんな和やかに談笑しているのだ。 なんでわたしだけ、独りでぼ~っと過ごさなくちゃいけないんだ!? ムカムカしながら、わたしは独りの殻にこもった。 すでに読んでしまった長編小説を読み返し、ふてくされてウトウトしかけたころ。。。。 「いくきーと、大丈夫!」とゆすられて、びっくりして目を覚ますと目の前にウイリアムの彼女の顔が。 わたしのベッドの周りにはウイリアム一家が鈴なりになっていて、病室のドアの外まではみだしていた。 隣の婆さんはあまりの大人数にびっくりしたのか、狸寝入りをしているのがわかった。 わたし「どうしたの!?」 ウイリアムの後ろからコックさんが「今からみんなでスーパーに買い物に行くんで、そのついでに来たんです。」←スーパーおたく おっと「きみにSAICUCCIOってひとから小包が来てるよ。」 そうなのである、心優しいSAICUCCIOさん、何か送ってくれると数日前に言っていたのだ。 おっとはバリバリと包みを開けた。 「たくさん本が入ってるよ。あとラーメンとおかきと、あ、ベネチアのビスケット!おい、みんなこれでも食べてくれや。」と本人の承諾もなく、ヤギたちに振舞い始めるではないか!? わたし「き~、ちょっと!それはSAICUCCIOさんがわたしにくれたのよ!!」 おっとは「ケチケチするなよ。」といいながらヤギたちに廻していき、最後にほとんど粉だけ残ったビスケットの袋をわたしに渡したのであった。涙 コックさん「。。。ラーメン、おいしそうですね。」 わたし「。。。。全部、わたしのだ。」怒 こうして大騒ぎしているとドアの向こうからせきばらいが聞こえた。 看護夫「え~、ゴホン。悪いけど ぼくは彼女の氷嚢を交換しなくちゃいけないんだけど。。。」 この声でヤギたちはわたしにキスの嵐を浴びせ、瞬く間に退散していったのである。 看護夫「なんか、君の友達を追い出したみたいで悪かった?」 わたし「あ?いえいえ、グッドタイミングでした。」←これ以上、被害を出したくなかったわたし。 看護夫「あの一人だけいた日本人が君の旦那さん?」 わたし「いえ。。。違います。」 看護夫「他の人、みんなナニジンだったの、ペルー人が大半みたいだったけど?」 わたし「全員エクアドル人で、うちの旦那もあの群れのひとりです。」 看護夫「え。。。!旦那さん、エクアドル人なの。へえ~。」と訳のわからない感心振りで出ていったのである。 隣の婆さんは看護夫が遠ざかったのを見計らって「なによ、あいつ。患者のプライバシーに突っ込んで聞いちゃってさ。」←それを聞いているあんたも他人のことが言えるのか? わたし「好奇心が旺盛なんですね。」 隣の婆さん「違うわよ、きっとあんたに気があるのよ!!」 OOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHH,NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!???????????? や、やめてくれ~、そういう考えもしなかったスキャンダルを産み出さないでくれ~!! この看護夫の名はシルバーノ。46歳、仏教徒。独身。過去に日本人の彼女を持った経験あり。 を、異常に意識して、彼のパデッラを絶対受け付けなくなったのは、この日からである。汗 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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