テーマ:海外生活(7771)
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前日月曜日の昼食時、さっそくおっとがドンジョイの箱を持って現れた。値段を聞くと135ユーロ。ほぼ半額であったので、即買いしてくれたのだ。
そういえば、病院の自販機のコーヒーも、我が社の自販機のコーヒーの3倍ぐらいの値段がする。病院とは医療費は安いが、その他自己負担品は高いようである。 箱を開けると、まるでおっとが持っているサッカーのゴールキーパーの足の防具のようなものが出てきた。 午後にはさっそく若いドクターが2人がかりで左足をウレタンの防具でサンドイッチのように挟み、金具を固定してマジックテープでパチパチと留めてくれた。 若いドクターのひとりが「どう?石膏ギブスよりだんぜんこっちが軽いだろう?」と聞いたのだが、足を持ち上げて「ほう、軽いな。」と試すわけにもいかないのでよくわからない。 そこで「これさえつけたら、独りでトイレに行けるんですね?」とおそるおそる聞いてみる。それはもちろんこの後、用を足したくなったとき、前日と同じ失敗を繰り返したくないからである。 するとこともあろうに、もうひとりのドクターが看護夫シルバーノを呼んで来てしまったのだ! ドクター「彼女、トイレに行きたいんだってさ。ドンジョイをつけたばかりだから歩行器でお供してあげて。」 OOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHH,NOOOOOOOOOOOOOOO!!!!! 看護夫シルバーノは日本の病院でもよく見る、老人が点滴をされたまま、看護婦さんに付き添われてよちよち歩いているような黒い歩行器を持ってきた。 わたし「い。。いまは、まだ行きたくないんだけど。。。?」汗 看護夫シルバーノ「せっかく持ってきたんだ。ドンジョイを試したいだろ?今のうちに行っときなよ。」とウインクする。 仕方がない。好奇心も手伝って、上半身を自力で起こしてみる。 このアクション、健康体なら大した事はないだろうが、事故直後から、今までこんな小さな動きすら出来なかったので、大した回復である。「五体満足」という言葉はまさにこんな状況に陥ってはじめてわかるのだな、と思った。 看護夫シルバーノ「左足はぼくが持っているから、ゆっくり右足をベッドの下に降ろして。。。」 わたしはこの言葉に従って右足を下ろすと、シルバーノはすばやくスリッパを履かせてくれた。 看護夫シルバーノ「右足でバランスをとって、両手で歩行器のハンドルを掴むんだ。」 わたしは右足で踏ん張り、慌てふためいてハンドルを掴んだ。すっかり筋力の衰えた右足がすぐにでも、ぐねってしまいそうな気がしたからだ。 わたし「立った!立ったよ!!」とウルウルとシルバーノを見る。 すでに彼はわたしの左足をおろした後だったが、ドンジョイでゆるい「く」の字型に固定されているので、この足は床に届いていない。 看護夫シルバーノ「ゆっくり右足だけで踏み出してごらん。」 ハンドルにしがみついたまま、右足だけで歩行器を押すと簡単に進んでわたしは廊下に出た。廊下の窓は換気の為に開けられていて、外のひんやりした空気が寝たきりでいつも何かに押しつけられっぱなしだった背中に気持ちよく感じられた。 トイレの前に着くとシルバーノはわたしが彼を嫌がるのを知っているので「ここから先は自分で出来るだろう?終わったら、ベルを鳴らして。」と行ってしまったのである。 ドンジョイ効果は素晴らしかった! まったく普通に、とはいかないが念願の便器にも座れたし、前日の大騒ぎとは打って変わって簡単だった。 用が終わってベルを鳴らすが、前日同様、誰も来る気配がない。 しかしわたしは落ち着いて、両手を石鹸で洗って、髪を手櫛で整え(←これも大進歩である。)一人で廊下に出て、しばらく立って歩く事を楽しんだ後、自力で病室に戻り、ここからは四苦八苦しながら、しかしこれも自力でベッドにあがって、独りこの小さな成功に酔いしれたのである。 そしてちょっと体力の回復を待った後、今度は看護婦を呼ぶこともなく、独りで首からタオルをかけて洗顔セットのポーチを口にくわえ、洗面所に戻り、1週間ぶりのまともな洗顔を満喫したのである。(←ずっとウエットティッシュ生活だった。)シャワー室もあったので、トライしたかったが、さすがに危険を考えてやめた。 こうして、何度もベッドから抜け出す事を楽しんでいるうちに夕方になり、中先生の回診行列が来た。 中先生「ああ、この患者は明日退院だな。」とカルテを見ながら付き添いの看護婦に言っている。 あ、明日? 今まで誰に聞いても「この2~3日中でしょう。」とあいまいな返事しかもらえなかったのだ。しかも朝の8時から9時半の間に退出、という。こんなにギリギリに言われても。。。! その後、すぐに仕事が終わってやってきたおっとに言うと「今言われて明日の朝なんて、絶対無理だよ!」と看護婦に談判に行ったおかげで夕方退出となった。 わたしと同日退院予定者は、同じく直前に知らされたようで、あちこちでパニックが起こったようである。汗 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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