シャトー・ムートン・ロートシルト 1973 パブロ・ピカソ
シャトー・ムートン・ロートシルトはボルドー5大シャトーの1つ。ボルドーで5つのクラス分けがされているグランクリュ(特級)の1級シャトーの5つのうちの1つです。ロートシルトはたまにロッチルドと書かれていたりしますが、なんのことはないのロスチャイルド家のことです。ロートシルトはドイツ語読みをカタカナ変換したものです。昔はよくフィクション世界で陰謀の黒幕になってたりしましたけど。そんなロスチャイルド家はもう一つ5大シャトーのなかの一つを所有しています。それがグランクリュ1級各付筆頭なシャトー・ラフィット・ロートシルトです。ちなみにこちら持っているのはロスチャイルド家ですが、微妙に枝分かれしておりまして、ムートンはイギリスで頑張ったネイサンさんの息子のナサニエル男爵が1853年に購入しました。ラフィットはそれを見たパリ在住のマイヤーさん(ネイサンの弟)の息子ジェームス君が1868年に購入しました。どう考えても対抗心を燃やした末の購入劇に違いありません。ちなみに、イギリスにいたナサニエルが買うのは間違っていないのが面白いところ。むかしからボルドーのワインはイギリスに輸出されておりました。ジロンド川からそのままイギリス方面に船で渡っていたそうです。というか、今はあたりまえにフランス領ですけど、100年戦争のころはイギリス領ですからね。歴史的にも経済的にもイギリス本国とのほうが結びつきは強いのです。したがってロンドンにいたナサニエルが購入するのは間違っていません。まあ、それを見たパリのジェームス君が「おれの庭先でなにしてやがんねん!」って思ったのでしょうね。そんなムートンですが、1855年にパリの万国博覧会にあわせて当時の皇帝「ナポレオン三世」によって最初に出てきた格付けが行われます。ようはランキングをつけた方がわかりやすい(=輸出しやすい)っしょってことです。そんときにムートンさんは1級ではなくて2級に格付けされてしまいました。理由はいろいろあるのですが、■ちょうど審査するころにムートンの評価が落ちていた■歴史的にも他の4つのシャトーに比べるとちょこっと評価が落ちる■イギリス資本だからなどが言われています。それに激怒したのがフィリップ君(その時のオーナー)そこからムートンのラベルにはこのような一文が入りました。第1級たり得ず、第2級を肯んぜず、そはムートンなり ( Premier ne puis, second ne daigne, Mouton suis. )そこからムートンさんはすさまじいロビー活動を行ったそうです。その結果1973年に当時農業大臣だったシラクさん(のちに大統領になります)がボルドー格付け唯一の例外として1級への昇格にサインをします。っていうか、何年かけとんねんえらい執念やねー。そしてそれ以降のワインのラベルにはこのように書かれています。今第1級なり、過去第2級なりき、されどムートンは不変なり。 (Premier je suis, Second je fus, Mouton ne change.)シャトー・ムートン・ロートシルトはいろいろワイン業界のためにも頑張りました。まずはシャトー本詰め運動を行って、それまでは樽単位でネゴシアンに売っていたものをボトリングしてから販売しました。樽で売ると瓶詰するときに混ぜてもわかんないので不正の温床になっていました。なので、昔のワインだとボトルにネゴシアン名が入っているのがあるそうですけど見たことない。また、ムートンはマーケティング的にも優れていました。それがアートラベルと呼ばれるもので、著名な芸術家さんにラベルデザインをお願いしてビンテージごとに発表するものです。これは1946年ビンテージから続けられています(2000年だけちょっと違う)有名どころでは1970年がシャガール。1975年がアンディ・ウォーホール。1988年がキース・へリングです。写真は1973年の昇格年を記念したパブロ・ピカソラベルのムートンです。バックには富士山がぼやーんと写っています。2007年にこのワインを購入して、中伊豆ワイナリーのセラーに放り込んでいたものです。今回ちょーっと飲む機会ができたのであけてみることにしました。1973年ビンテージはあまりいい年ではないのですが、昇格年だけに人気があります。けど、いい年ではなかったので、どうでしょうねー。40年前のワインだよ。おいしくなかったらごめんなさい。ということで、広島まってろよー!!