僧正殺人事件:S.S.ヴァン・ダイン
<あらすじ>春のニューヨークを震撼させた悪夢。アマチュア探偵ファイロ・ヴァンスが関わった事件の中で、最も陰惨にして奇怪、戦慄的なものといえば、間違いなくこの“僧正殺人事件”だろう…。「だあれが殺したコック・ロビン?『それは私』とスズメが言った」マザー・グースの歌詞をなぞるように進んで行く不条理な連続殺人。ヴァンスと犯人との鬼気迫る攻防―!乱歩がベスト3に選んだ「童謡殺人」の歴史的傑作。この作品を読むのは3回目なのですが、結構忘れていました。あきれたことに犯人まで忘れていたので、最後まで楽しめました。これは「グリーン家殺人事件」と並ぶヴァン・ダインの古典的名作で、重要な登場人物や容疑者がほとんど数学者です。そのため、途中で学術的な用語が出てきたりして読みづらい箇所もありましたが、その中にも重要な意味があったりもするので油断できません。マザー・グースの童謡にそって殺人がおこるという無邪気さと残酷さの取り合わせにまず目を奪われ、ファイロ・ヴァンスの博識、教養あふれる自由闊達な思考に魅せられ、二転三転する結末には衝撃を受けてしまいます。読み応えのあるミステリで、文章は素晴らしく、いいものを読んだなぁという気持ちになりました。コック・ロビンでちょっと「パタリロ」が頭をよぎってしまいましたが……。僧正殺人事件 :S.S.ヴァン・ダイン