とむらい機関車:大坂圭吉
聞いたことがないけれど、気になる題名だったので、どんな話だろう?と思って読んでみました。とむらい機関車/デパートの絞刑吏/カンカン虫殺人事件/白鮫号の殺人事件/気狂い機関車/石塀幽霊/あやつり裁判/雪解/坑鬼 「随想抄録」これはかなり昔の作品でした。作者の大阪圭吉さんは明治45年生まれ、戦前の作家で、戦争中に南方で戦病死なさったそうです。この作品が書かれた頃は確か、推理小説といえばおどろおどろしいもの、幻想的なものが主流ではなかったかと思うのですが、この方の作品は論理的推理によって事件の解決をみます。本格派と言っていいでしょう。こんな方がおられたとは、知りませんでした。表題作「とむらい機関車」には陰惨でぞっとする描写もありますが、何度も豚が機関車にひかれるという謎の意外な真相に驚かされ、なんともいえない物悲しさが、深く心に残りました。もちろん今とは情景も世相も違います。そして炭鉱で働く人など、労働者が多く登場するところも珍しいです。挿絵が幾つかあるのですが、その頃のことは知らないはずなのに、懐かしい気持ちになります。「探偵小説」という言葉が自然に浮かんでくるようなレトロな雰囲気が味わえましたね。 とむらい機関車 :大阪圭吉