拝啓父上様
録画したドラマを何度も繰り返し見ると作者が訴えたいことが少しずづわかってきます。一回だけではよくみえてこなかったものが見えてくることもあります。役者の演技は倉本のドラマではきわだってよく見えます。役者の才能や持ち味を十分に引き出す監督の腕も一躍かっているものと思われます。 倉本聡にかかればタレントが俳優に見えます。ひとつひとつの場面でも俳優の表現が他のドラマに出演したタレントとは格別に進歩していることがわかります。こんなへんてこりんなタレントが倉本のドラマで名俳優に変身することが倉本のドラマの魅力だと思います。 拝啓父上様はいってみれば「神楽坂の再開発」といえます。坂下という老舗料亭がなくなってしまうドラマなんですが、ただそれだけでなくこの料亭関係者の柵についての物語です。主人公は一平という風変わりな板前の若者であり、別の面からはどこにでもいるような若者です。職業事態が封建的で古臭い職業に感じますが、その中に飛び込んでゆく一平の戸惑う姿がおかしく感じます。気がついたのが「間」のとりかたがたいへん上手だということ。私たちがいろんな人と話すときにもうまく取り入れたい話法だと思います。