まわりが動いてくれる。ありがたいことだ
ぼくは淡白な性格で、うまくいかないとすぐにあきらめるし、物事をとことん突き詰めようとする気迫も根気もなく、寝食を忘れて何かに取り組んだこともない。「まあ、いいや」で終わらせることがほとんど。決断も人任せだったり、自分の意志よりもまわりへの忖度を優先したりもしてきた。世の成功法則から言えば、完全に落第だ。これまで立派な仕事を成し遂げた人を取材してきたが、みなさんすごい。どんな困難があっても、自分の信じた道を突き進み、ついにはすばらしい結果を出している。こうじゃないと成功できないよなと納得できる。ぼくとは正反対。それでも、「一冊でも本を出したい」という夢は叶って、20冊ほどの本が出せた。ベストセラーになって本屋さんに山積みにされる光景も望んだが、これも叶った。ぼくとしては大成功の人生だ。ぼくの面白いところは、まわりがどんどん動いてくれて、ぼくが漠然と思っていたことを実現してくれることだ。何が何でもこうしたいなんて思っているわけではない。強い願望ではないのに、自分の力ではとても実現できないこと、それもぼくがやりたかったことが、向こうからやってくる。そして、ぼんやりとしている間に、まわりががんばって動いてくれて、ぼくが評価される結果になるのだ。本も、ぼくが企画したものは一冊もない。ぼくとの雑談の中で、編集者がネタを見つけ出してくれた。「がんばったね」ぼくが褒められるのだが、ぼくは何もがんばっていない。おぜん立てされたところに、ひょっと顔を出すだけ。得な役回りだ。ぼくはこのペースなんだと思う。とにかく、目の前のことを一つひとつ着実にこなしていく。そうすれば、チャンスが向こうからやってくる。