ウミノツキ/いつき朔夜
ウミノツキ本当のおまえが知りたい。その夜明けのような瞳が、何を見つめているのかを―。玄界灘で行われることになった復元船による航海実験。水軍の末裔として、プロジェクトに加わった大学生の海士は、そこで出会ったタイからの留学生アレンに惹かれる。カラダから始まった二人の関係に、海士は夢中になっていった。だが改めて好きだと伝えた時、アレンに拒絶されてしまい…?青春マリンブルー・ロマンス。いつきさんのお話が気になり始め3冊ほど未読本を抱えておりますが、佐々木久美子さんのイラストということで新刊を購入、急いで読了いたしました。丁寧なストーリーを書かれる方だったのですねぇ~。新しい世界を見つけたような、新鮮味を感じました。舞台となるのは玄界灘・・・・ってどこだ?と、判らないまま読み進んだのは大失敗。お話は昔の伝承を立証するプロジェクトのため舟を復元し、玄界灘から壱岐島、対馬を経て大陸へ渡っていく航海を背景に、地元名士の次男である海士と漕ぎ手の一員であるアレンの出逢いから心の繋がりが出来上がっていくまでになっています。女性と勘違いしてアレンに一目ぼれして参加するつもりがなかった航海に突然参加してもいいと言い出したり、アレンと関係ができるとPCでいろいろ勉強したり。等身大な行動がそれぞれに楽しい。中盤では最初は積極的だったアレンが突然海士を避けだし、問い質そうとした海士を拒絶するなどの波乱があり、航海のほうも学生達だけで予定をこっそり変更し、夜半闇の広がる海へ漕ぎ出さないとならなくなるような事態が発生。深刻なムードとなってきます。本編の他にショート『みおつくし』と『アオスワイ』が入っています。『アオスワイ』では、遠距離恋愛でなかなか一緒の時間がつくれない事に痺れをきらした海士が、一時帰国するアレンに同行し、タイのアレンの家へ訪問するお話になっています。家族愛に溢れていて暖かく、やっと二人きりになれた時間がとっても甘い、いいお話でした。