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カテゴリ:音楽雑感
なんと32年ぶりの出演となります、モーツァルティアーナさん。以前(学生時代)モーツァルト以外のメイン曲でお世話になりましたが、今回もモーツァルト以外。しかし念願の「白鳥の湖」全曲の演奏をさせていただけることになりました。ソリストだけではありますが踊りも入る中での演奏ができ、感無量です。練習場は昔のまま(のはず)ですが、記憶がなく、学生時代いかにビビりながら練習に参加したか、だけを思い出しました。
《アンサンブル・モーツアルティアーナ 第83回定期演奏会》●日時2月23日(日) 天皇誕生日 15時00分開演 ●場所 ●出演者 寺嶋陸也(指揮) アンサンブル・モーツアルティアーナ ●演奏曲目 チャイコフスキー:白鳥の湖 全曲(演奏会形式) ●料金 ¥3,000(当日指定) ●お問合わせ モーツアルト・サロン 06-6364-5836 ![]() ![]() 演奏曲目別の私の演奏位置と使用弓、演奏回数は以下のとおりです。 ・チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」全曲 (Kalmus譜面。全曲は初) 1.5Pult中2Pult 1人弾き 独弓、4弦(extendor未使用) いずみホールは、大阪城公園近くのクラシックコンサート専用ホール。オルガンも付いた本格的なシューボックスタイプのステージで、客席数821席という中ホールサイズです。ザ・シンフォニーホールの小型みたいな感じでしょうか。学生時代にはなかったホールなので、これまで聴きに訪れたことが数回あるだけでした。その最も印象深いのが、コントラバス奏者奥田一夫先生の追悼演奏会でした。今回は初めて出演者としてホールを訪れたのですが、響きも運用もよく考えられた、とても素晴らしいホールでした。
![]() いざ蓋を開けてみると、お客様は6~7割程度(500 ~600人くらい)の十分な入り。普段と同じか少し多いくらいとのことでしたが、今回は当初チケットの売れ行きが良く(白鳥の湖効果か!)、溢れることを心配していたくらいだったようです。結局皆様マスクを付けた上での鑑賞となりましたが、ありがたい限りです。 このオケは元々モーツァルトの演奏を念頭に置いているので、編成はかなり小さい8型前後、コントラバスも2~4人というところが標準で、以前私が出演したのも「ロマン派楽曲を演奏するためのエキストラ」というのが、多分その理由だと思います。今回もチャイコフスキーということで、コントラバスも当初は4名で編成。最終的には3名となりました。 チャイコフスキーとしては非常に小さい編成(高音側から、9-9-8-7-3人)ですが、今回は踊りもオケもステージ上、しかもあまり広くないいずみホールのステージなので、これが限界に近いものでした。オケピットと思えば、こんなものかも知れません。ステージ前面にバレエ用のリノリウム板、残りのスペースでオケが配置する形なので、横に広がる対向配置(特に4幕の情景で1st/2ndの掛け合いがはっきり聞こえる。下手から1Vn,Vc,Va,2Vn)。コントラバスはVcの後ろ、中央上手寄りでした。 いずみホールの舞台は中央にオルガンが張り出しているため、弦楽器中央は、指揮者、Vc/Vaの1pult、Cb/Va2pult の3列がやっと、と言う状態。管楽器は仕方なく弦楽器の後ろ両翼に配置となりました。 下手側は、1stVnの後ろに木管楽器が4人×2列(前列がFl/Ob,後列がCl/Fg)、Vcの横にハープ、コントラバスは中央奥下手半分。 上手側は、Vaの奥に金管が2列(Trp/Cornet、Trb/Tu)、2ndVnの後ろにHn,そして金管の更に奥に打楽器が陣取りました。打楽器が指揮者からかなり遠くてタイミングに苦労することとなりましたが、コントラバスは指揮者の棒が届きそうなくらい近くでしたので、弦のアンサンブルはとてもやりやすい配置でした。 ![]() コントラバスは3名。横一列で、雛壇なし。 譜面台は2人一本。とはいえ私は1人弾きでしたので、楽譜がよく見え演奏に集中できて助かりました。 バスの置き椅子は置く幅がなく、そしてオルガンの壁際なので椅子を置いてもコントラバスを傾ける奥行きもなく、結局オルガン張り出しの上手横、ハープや木管楽器の奥スペースに椅子を置いて、休憩時間はそこに立てかけることとなりました。Harpのエキストラさん(いつもの関西屈指の名奏者、Sさん)にいちいち椅子を寄せてもらったり、と恐縮することしきりでした。低音拡張は、エクステ1本、エクステンダー1本ということで拡張率66%。しかし今回の「白鳥の湖」は誠に上手く書かれていて、拡張領域の必要性がまったくない珍しい曲。なので、おとなしく4弦範囲での演奏となりました。 アンサンブル・モーツァルティアーナといえば、私の少し上の世代の関西学生オケトップレベルの皆さんが集まって結成した、という経緯を持ち、常設練習場としてメンバーでもある京大オケOBの方所有の会場(モーツァルトサロン)を使用する、関西でももう老舗に属するアマチュアオーケストラです。 経緯からしても非常に演奏レベルの高いオケですが、設立当時は中核メンバーの世代が大学卒業すぐと言うことで、学校の楽器を使っていることの多いコントラバスについてはメンバー(個人楽器、自家用車を持って練習に参加できる人)が足りなかったらしく、出身校のオケからエキストラを調達していたようです。 当時学生だった私も3回生の時に白羽の矢が刺さってしまい(笑)、それから年1回のペースでエキストラ(といってもギャラは出ない)参加してました。楽器は同期が自家用車や借り物のハイエースで学校の楽器を積んで(ついでに身体も乗っかって)の京阪往復でした。 まぁ参加してみたら、周囲は上手いわ、知っている先輩は多いわ、曲は難しいわ(シューマンのライン、モーツァルトの25番(小ト短調)やVn/Vaの協奏交響曲など弾かせてもらいました)で、エキストラというより修行している状態でした。学生時代、ここと京都市民管での演奏は、ビビった覚えしか残っていません(笑)。しかし学生オケだけでは得られないレパートリー、奏者と出会えて、良い勉強をさせてもらいました。京都市民管さんは最近ちょくちょく乗せていただくこともありますが、これでモーツァルティアーナさんにもご挨拶(ご恩返しとは、とても言えません)できて、ちょっと肩の荷がおりたような気持ちです。 ![]() 現在のモーツアルティアーナさんは、演奏会単位でメンバーを招集して、団費を払ってエントリー、という制度のようでして、ほぼ常時参加されているのは2名。そのうち音大卒の名手Oさんは、今回は直前に急用が入り無念のキャンセル。もう一名は私の学生時代の後輩(といっても入れ違いなので、かぶってはいないながらもかなり面識はある)T木さん。今回は曲の編成も大きいので4名ということで奏者を探したようで、結局私と同じく私の学生時代の後輩Mさん(彼にはびわバス団でもお世話になってます。2年間重なってました)2人が参加し、当日は3名、ということになりました。 当初お話しいただいた時には、全練習回数が4回しかない中、そのうち2回しか行けないことで一旦他を当たっていただいたのですが、結局自分に戻ってきて、今回念願の白鳥の湖全曲演奏となりました。それにしても練習2回での全曲公演はキツかった・・演奏について行くのもそうですが、それよりもこの名曲群の音の中にもっともっと居たかったです。 私の学生時代は、こちらの指揮者は創業時のコアメンバーの1人でもあった岡田司先生だったのですが、今回は寺嶋先生の指揮。そりゃ30年以上経ってますからね。。その間の変遷については、あいにくモーツアルティアーナさんがホームページを持っていないことから経緯がわかっておりません。そしてソリスト。バレエ音楽として「白鳥の湖」なら音楽だけでも全曲通して十分楽しめる曲なのでオーケストラだけの演奏会形式もあり得るのですが、今回はさらにバレエのソリスト2人が女性主役オデット(オディール)と男性主役ジークフリートをつとめ、さらにクレジット外の方が悪役ロットバルトに扮して、実際のバレエをステージ上で披露してくださいました。 「白鳥の湖」は名作だけあって、コール・ド・バレエ(大勢での群舞)やキャラクタリスティック・ダンス(特徴ある舞曲による踊り)も印象的なのですが、やはり主役2人が踊るだけで、山場を一杯見ることができ、半ばバレエ全幕公演のような充実感になりました。 実際には踊られた2人との舞台合わせは演奏会当日しか無く、踊る曲目もオケ合奏初日の練習録音を聞いて決めて行かれた模様。ほぼぶっつけ本番に近いにも関わらず音楽に連携した見事な踊りで、やっぱり2人のグラン・パ・ド・ドゥなどは引き込まれてしまいました。ピットと違い指揮者の向こうに2人の踊りが見える恵まれた配置のはずなのですが、こちらは楽譜と指揮、コンマスを見るのに必死で本番ではあまり見ることができず。。ビデオがあれば見たいものです。 ![]() 「白鳥の湖」、第2幕「情景」の旋律はオルゴールの定番、組曲は学生オケからプロオケまで、オーケストラのメジャーなレパートリーとなっていますが、もちろん本来の「バレエの伴奏音楽」としても絶大な人気を誇ります。ただ、バレエはオペラ以上に舞台上優先となることから、演奏曲の取捨、移動、他作曲家の曲の挿入などが屡々行われるものでもあります。「白鳥の湖」もチャイコフスキーが作曲したオリジナルと、現在広くバレエで用いられている慣用版とはかなりの差異があります。 経緯はIMSLPのこの曲の項に詳しいのですが、大まかには ・作曲当初の曲群(1877年初演分)曲番号No.1~No.29 ・初演直前にチャイコフスキー自身が追加したナンバー(No.19a パ・ド・ドゥ4曲とNo.20a ロシアの踊り) ・チャイコフスキーの死後2年での蘇演時(1895年:これが今でも基本の版となる、プティパ=イワノフ版。)に曲順、結尾、カットを加え、ドリゴ編曲によるチャイコフスキーのピアノ曲からの編曲音楽を3曲挿入。 オリジナルとプティパ=イワノフ版との対照は、下記のリンクが詳しいです。 http://musikfreund.blog64.fc2.com/blog-entry-103.html 今回の譜面、私の手持ちのスコアではオリジナル曲群が通しで載っていて、補遺として「ロシアの踊り」とドリゴ編の3曲が巻末に載っています。(学生時代に購入の、Brode Brothersの譜面。ロシアのリプリント版と思われます) そしてパート譜はKalmus版。(IMSLPに載っているのも、この版のようです)手書きで見にくい(笑)。こちらは曲順はオリジナル順でありながら、プティパ=イワノフ版のドリゴ編挿入曲3曲はそのまま本編楽譜中に入っていて、プティパ=イワノフ版結尾用の音符は「終止用」などとして並列記載。そしてロシアの踊りは巻末に補遺として掲載されていました。 今回演奏した内容をKalmus版の譜面で記載すると、以下のとおりになります。 概ねチャイコフスキー・オリジナル版を短く詰めたものに、No.19aのパ・ド・ドゥの冒頭を追加した、といえます。 ![]() 序奏 第1幕No.1 情景(中間部カット) No.2 ワルツ No.3 情景(カット) No.4 パ・ド・トロワ(第4,5曲カット、6は一部カット) No.5 パ・ド・ドゥ(第1,2曲繰り返し省略、第3曲カット、ドリゴによる挿入曲(黒鳥の遊び)カット) No.6 パ・ダクシオン(一部カット) No.7 シュジェ(カット) No.8 杯の踊り(一部カット) No.9 フィナーレ(カット) 第2幕 No.10 情景 No.11 情景(一部カット) No.12 情景(コーダ部のみ演奏) No.13 白鳥たちの踊り(第3曲カット、第5曲(グラン・パ・ド・ドゥ)はドリゴの終止(組曲と同じ)を採用、第6曲カット、第7曲繰り返し省略) No.14 情景(中間部カット) 第3幕 No.15 序奏 No.16 コール・ド・バレエと一寸法師の踊り(カット) No.17 情景(一部カット) No.18 情景 No.19 パ・ド・シス(序奏カット、バリアシオン1~4カット、コ-ダカット) No.19a パ・ド・ドゥ(初演時のチャイコフスキー自作による挿入曲。導入曲のみ追加) No.20 ハンガリーの踊り No.21 スペインの踊り No.22 ナポリの踊り No.23 マズルカ(一部カット) No.24 情景(一部カット) 第4幕 No.25 序奏(冒頭のみ演奏、ドリゴによる挿入曲(ワルツ・ブリアント)をカット) No.26 情景(前半部カット) No.27 小白鳥の踊り No.28 情景 No.29 情景・フィナーレ(ドリゴによる中間部挿入曲(ショパン風に)をカット) 補遺 No.20a ロシアの踊り(未使用) CDなんかにはけっこう入っているNo.19a(パ・ド・ドゥ)は、意外と楽譜が流布していないようで、今回もスコアから改めてパート譜を起こし直しての挿入となりました。 これらのカット、挿入があり楽譜の手描き指示を追いながら、初回練習でもダンサーさんに聞いてもらえる録音ができるモーツアルティアーナ、さすがでした。 曲中随所に現れるコンサートマスターの長大なソロ(特に第1幕のものは、ほぼヴァイオリン協奏曲級)も難なくこなし、本番でもここのあとは例外的に拍手が巻き起こるくらいでした(ほんとのバレエ公演だともっと曲中拍手が出るんですが、演奏会形式なのでコンサートに準じたのか、曲間の拍手はほとんど無かった)。 ![]() ホールでの演奏は、木管と金打楽器が両翼遠くに離れたため所々アンサンブルがヒヤッとする場面はありましたが、ベテラン揃いの弦楽器と京大オケ系の現役・OBと思われる若いメンバーが中心の管打楽器のパワーが組み合わさった堂々たる演奏。これが練習4回でできるのか・・・2日練習×2~3回で演奏会に臨んでいた、いさだ室内管以来です。このシステム。(コバケンと仲間たちオケもリハーサルは前日もしくは当日だけですが、セットリストが毎年ほとんど固定のため、そもそも練習がほとんど要らない) 自身はどの曲もすぐに頭に曲が流れ出すほど好きな曲ばかりなので、それが生の演奏で紡がれていく感動の中に身を置いていましたし、なによりコントラバスパートの3人が、学生時代「演奏旅行は白鳥湖(組曲)」世代の共通項を持っていることから、弾き方(全員同門)含め息の合った、しかもパワフルな演奏ができて、組曲を演奏した八幡オケ(市民音楽祭)の時と並んでの感動でした。 勢い余って3幕のマズルカでは、ほぼ全員休みの拍で威勢良く弾いてしまう(音程良かったのがせめてもの救い・・)ミスはやらかしてしまいましたが、音程がオケ内でバシッとあった時のコントラバスパートとしての音は消えてサウンドが上に浮き立つ感じや、終曲へのブリッジ部分(No.28のコーダ)で最後にコントラバスがはいるリズム打ち込みが荒れ狂うオケの音の中で明確に響くなど、楽しい驚きの連続で、終曲の情景に入って以降は、先週のべー74楽章コーダ部分に続き、ウルウルしながら弾いてしまいました。 大学時代にオケに身を投じ、演奏旅行で「白鳥湖」を弾いたことがきっかけで、先輩から「SWAN」「アラベスク」の全巻を借り、「白鳥の湖」全幕のピアノ版総譜全部をコピー、製本して見入った学生時代から、この曲は私のオケ人生の一つの原点であり、夢でした。その夢が、ようやく叶いました。声を掛けてくれ、練習回数少ないにも関わらず演奏させてくれたTさん、(本番は欠席となりましたが)Oさん、そしてオケの皆さんに感謝の気持ちで一杯です。 打ち上げもプロジェクト型+ファジー運営が持ち前のこのオケらしく、有志で集まって近くのライオンにて飲んで終わるとのこと(大阪ビジネスパークと隣接しているので、お店は多い)。私は「終演後2時間」の駐車場定額が気になって(笑)、お暇させてもらいました。オケメンバーには学生オケの大先輩らがいらっしゃるので、ご挨拶に参加したい気分半分、怖くて出たくない半分、というのが正直なところでした。 ![]() こちらのオケはイベント単位での招集オケ、次回はわずか3ヶ月後の2020年5月とのこと。やはりいずみホールで、ドイツから2人のピアニストを招いての協奏曲や動物の謝肉祭などを演奏するようです。となると編成も小さくなるので、次回お声掛かることは多分無いかな・・と思っています。 過去の演奏経歴です。通算351ステージ目。 ■チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」(学生時代の演奏旅行分を除く) ・1992/09 横浜シティ・フィルハーモニック(児玉 章裕)「情景」 ・1992/11 東京グリーン交響楽団(堀 俊輔)「ワルツ」 ・1998/07 富士フィルハーモニー管弦楽団(堀 俊輔)「スペインの踊り」(アンコール) ・2009/06 滋賀医科大学管弦楽団(岩井 一也)「ワルツ」 ・2010/07 八幡市民オーケストラ(安藤 亨)「ワルツ」 ・2014/07 八幡市民オーケストラ(安藤 亨)音楽物語「白鳥の湖」(ナレーション入り抜粋) ・2015/02 八幡市民オーケストラ(安藤 亨) 抜粋(組曲全曲+終曲) ・2016/09 紫苑交響楽団(森口 真司)「第3幕情景(序奏)」(アンコール) ・2017/02 京都大学交響楽団100周年祝祭オーケストラ(寺本 義明)「ワルツ」 ・2017/04 グリーン交響楽団(佐々木 宏)「第3幕(No.21)マズルカ」(アンコール) ・2018/06 滋賀医科大学管弦楽団(岩井 一也)「ワルツ」 アンサンブル・モーツァルティアーナでの演奏履歴です。(5回目) 1984/10 第17回定期演奏会 府立労働センター 岡田 司 (ライン) 1985/12 第19回定期演奏会 府立労働センター 岡田 司 (ブラ4) 1986/09 第20回定期演奏会 アルカイックホール 岡田 司 (ブラ1) 1987/12 第23回定期演奏会 大阪国際交流センター 岡田 司 (運命) 2020/02 第83回定期演奏会 いずみホール 寺嶋 陸也 (白鳥湖全幕) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.02.29 10:22:14
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