銀の裏地

　2日目のセレモニーが急遽なくなり（昨日の記事参照）、お仕事がなくなったナン。ほんとは今日は体操教室で練習する日だったのだが、もう振り替えてしまったので体は空いている。となれば、観に行くしかないでしょうジャパンカップ。補助役員と付添は今日も入場できるのである。亭主殿がお休みだったので、キイが小学校の地区行事（6年生が全部を仕切る。案外はりきっていた。キイは小さい子の面倒を見るのが苦にならないのだ）から帰ってくるのを待ち、昼ごはんをサーブして、ナンと私の2人でおでかけ。ゼロも一応納得顔。「ママ、行く？　ボク、行かない」「ナン、たいそう。ママ、たいそう？」いつもの教室ではなく電車に乗っていくことを教えると「ボク、行く！」になるので「ママ、体操！」とだけ答えて出かけた。
　チケット売り場で申告をして入場券を貰う。身分証明書の確認とか無いんですね。お揃いで支給されたユニフォームがわりのジャパンカップTシャツも着てなかったのに。でもまあ、せっかくの日本での国際大会で、中国やアメリカがメインの選手をみんな派遣してるのに、会場はかなり空きがあったからいいのかな。
　キイを待った分だけ少し遅れて、入ったときは女子の1巡めがほぼ終わる頃だった。鶴見虹子選手の段違い平行棒が見られなくて、鉄棒娘のナンはショック。背が低くてきびきびした動きをする鶴見選手はナンの憧れなのだ。そのかわり田中理恵選手の平行棒はすぐに見られた。スタイル良し、顔良し（ぱっちりおめめ）、チャ―ムもあって体操ものびやか。天は田中選手にいろいろ与えている。前回の世界選手権だかでエレガンス賞という特別賞を受賞しているくらいだ。こんな風にばっちり目立つ美人さんの体操選手は日本では小菅麻里くらいしか知らない（体操のゴクミとか和製コマネチと言われていた）。小菅時代は個人的には手足が長くて風情のあった真田マキ子を応援してましたが。床でも平均台でも結構な大技をやるのに大和撫子な雰囲気を保ち続ける選手だった。名古屋から東京へ移籍したことを随分叩かれていて気の毒だった。実際にはお父さんの転勤がらみだったはずだ。父の同僚だったので、お父さんのほうは何度か我が家でお会いしている。

　鶴見選手は中国から来たコーチに育てられたためだろう、丹田に力を集中させた演技を見せる。軸がぶれない。メリハリがある。「正しさ」で得点できる選手。この日は平均台でのふらつきなど微妙なミスがあちこちに見られたが（解説の元選手が「ほぼ完璧でしたね」と言っているのを聞いて、「どこ見てるんだろうねー」とはナンの談）、それでもずば抜けていた。
　もう一人素晴らしかったのが、中国のスイ・リン選手（という感じの表記だったが自信ない。漢字は姓が目ヘンに圭、名が禄）。４種目を合計した総合得点で鶴見（ローマ字ではKOKO表記なコーコちゃん、なんか可愛い）と僅か０．１００点差だった実力派。特に素晴らしかったのが最終種目の床運動で、難度が上がってからは特にシリーズごとにブツ切りになる選手がほとんどの中、常に気が流れ続けていた。一つの演目、になっている。私の見たいのはこちらなので、これから彼女には注目していくことになりそう。平均台の着地で尻もちをついたのが大減点だったろうからもったいなかった。この時はちょうど横で実施中だった白人の選手の床運動の曲にぴたりと合う音楽的な動きを見せていて、やはり相当なできだったのだ。律動性、それも音楽的なそれが見たい。世界と響き合う身体。
　鶴見選手はメッセージが外へ発信されず、内側へ行きすぎる感じがちょっと気になる。気を集めるのは重要だけれど、アピールも必要なのが体操選手だからね。観客と直接、なんてことは意識しなくてもいい、世界との交感、というつもりでオープンな演技ができると金メダルも夢ではなくなるはずだ。

　女子が終わってもうお腹いっぱいといった感じのナン。記念に買ったシュシュは次の検定会でつけるらしい。縁起かつぎ（笑）。私はウッチーの鉄棒にちょっと心を残しながらも、昨日までの週の疲れと明後日からのハードスケジュールに負けて、ナンに付き添って帰ることにした。
　ちょっとだけ愚痴。フジテレビのアナウンサーの残念な態度はなんとかならないものか。局の方針なんだろうけど、日本選手の名前のみコール、そして応援や拍手の強要。選手の名前くらい全員読み上げたって大した手間じゃないし番組進行の妨げにもならないだろうに。ああいう品のないのはほんとにいやだ。観客を育てようなんて気はさらさら無い。瞬間風速な視聴者を煽れればそれでいい的な。フィギュアスケートにしても体操にしても、もういいよフジは出てこなくて。