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カテゴリ:芸風リセット
「ねえ」
呼びかけるとヒロミさんはテレビを見たまま「うーん?」と答えた。少し寒い日曜日の午後である。 「私たちって似てるんだって」 興味なさそうなヒロミさんに構わず話を続ける。ずいぶん前にナガイくんに言われたんだけど。 「ふーん」 だめだ。いっしょに暮らし始めてわかったのだが、ヒロミさんはけっこうテレビ好きだ。見始めると何時間でも、こうやってテレビと向かい合っている。そんな時は何を言ったって、全然覚えていないのだ。 仕方なく、私はヒロミさんの横で爪を切った。ぱちん、ぱちんと。それから洗濯ものをベランダに干した。なんだか口さみしくなったので、コンビニに行き、アイスクリームを買ってきて、食べた(もちろん、ヒロミさんの分も買ってきた。「いる?」って聞いてもなんにも答えなかったから、ひとりで食べた)。食べ終わったら寒くなったので、お茶をいれて飲んだ(こんどは「いる?」って聞かなかった)。一息ついて見ると、こたつの上にアイスクリームのふたがそのままになっている。ごみ箱に捨てよう、と手をのばしたとたんにヒロミさんが言った。 「そういえば、ナガイくんって、女の子みたいだったね」 アイス食べる?と聞くと、ヒロミさんは、え、そんなのあるの?とうれしそうな顔をした。 now I'm reading "Hazuki-san no koto" written by Hiromi Kawakami. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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そういえばちょうど川上弘美の本を読んでいるところです。
あとちょっと前に偶然ネットサーフィンでたどり着いた日産TEANAのサイトで読んだ小説も川上弘美でした。 あなたと、どこかへ。というタイトルで出版されているようです。(数人の作家による短編集です) いまさらですが、私のプチブームかも。 (2007.03.01 22:23:04)
keiさん
ちょっといいでしょ?ひろみさんも。 他愛もない、ほんのちょっとした気持の揺れみたいなものを小説に書きたいと思うのですが この人が書いているのももしかしてそういうことかも、と思いながら読みました。いかに上手いかよくわかりました。感服しきりです。 (2007.03.02 00:10:32) |