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カテゴリ:怪談
時に元禄十五年十二月十四日江戸の夜風をふるわせて、響くは山鹿流儀の陣太鼓、しかもひと打ち二打ち三流れ・・・。
もとい、時は昭和49年6月11日。間借りしているお宅で、夕方昼寝から目覚めようという刹那、目だけあいたまま、全身が動かなくなった。気配を黄緑色の薄いカーテンの側に感じた。 ベッドはそのお宅の子供との共有の二段ベッドである。子供は学校だから私一人。 薄いカーテンの向こうに女の立ち姿が見えた。ここのうちの奥さんかと思ったが、無言である。そのうちその女の足が床についていないのに気がついた。 「女の悩みを聞いて・・・」という言葉が耳に届いたが、はっきり聞き取れなかった。「この世の者でない」となぜか感じた。少しずつ寝床に近づく気配だ。 逃げようともがいたが、ぴくりとも動いてくれぬ。 幽霊現象に巻き込まれたと観念した。半分は亡霊を見ることができた喜びで好奇心も働いた。どんな姿形か、見たいと思った。 次の瞬間、女の顔がにわかにクローズアップ現代、じゃなかったクローズアップ画面のように大きく見えて、そのとき初めてゾッと戦慄が走った。逃げなければ。再び思い、念じた。「動け、体よ動け」。マハリク、マハリタ、ヤンバラヤンヤンヤンでもなければ、テクマクマーコンでもない。古いところではアブラカダブラー。 何にも恐くない。作り話と思われる。いえいえ、体験談です。 一念通じたか、突如足が動き勢いで壁を蹴っていた。女の姿は消えていた。奥さんの足音がし、顔を覗き込んで「どうしたの、お兄さん?」 「奥さん、こんな感じの婦人知ってますか」。特徴を告げた。奥さんは部屋を出ていき、しばらくすると一冊のアルバムを持ってきた。 二度、背中に冷水を浴びる戦慄が走った。アルバムの中に最前の婦人の姿があった。 「この人、今来ました」 「だって、この人、お産で死んだのよ」 知らないうちにそばのタンスの固いとびらが開いていた。奥さんの顔が真っ青になった。 「お兄さん、あそこからはみだして落ちそうになっている白いハンカチ、その人が産婦人科へ入院する前に、これからもよろしくってくれたのよ・・・」 その時、ガラス窓をノックするようなトントンという音が聞こえた。見ると、閉めておいた窓が少し開いていた。奥さんは青い顔のままだった。私はおなかがすきはじめていた。 恐くなくてすみません。亡霊好きなんです。だって、私もあなたも、いずれ死ぬ時が訪れ、そして、そのうちの何割かは今生に未練を残して、あの婦人みたいになるのだから、元生きていた人と思って、むやみに恐がったりしないほうがいいのです。 悪霊?そんなのいません。霊は救われたいから来るのです。頼る人間をとり殺したら、自分も又成仏できないまま、同じことを繰り返すだけなのだから、人間を守るのです。一人二人三人、なるべく気前よく受け入れるべし。 今書いている私の背中にも、気配があります。振り向くと向こうも気をつかうから、ここは、同じ人間同士、心配りが大事です。イラクの人々も気の毒だけど、魂魄この世にとどまりたる人々にも、そくいんの情を、ボランティア精神で行きましょう。 ちなみに、昨夜はうつぶせに寝た私の背中に誰かがおおいかぶさって来ましたので、そのままちょっと重かったけど、添い寝の形のまま眠りました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.03.11 15:55:46
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