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カテゴリ:コラム
いわゆる放送禁止語を並べて、言葉狩りもほどにせよなどと、めくじら立てる程のけんまくで書くつもりはない。
少年時代だったか、我が国唱歌ではなく、明らかに外国の歌で、しかも音楽教科書にあったかどうかはわからないものの、よく耳にし、又必ず何かの歌集で目に触れる歌があった。 穏やかで明るく、美しい歌である。 タイトルは「ドミニク」と呼ばれたろうか。 歌われる主人公は盲目の少女である。だが、この少女は不幸な境遇にもかかわらず健気に生きることが、歌詞とメロディーから、充分伝わってくる。 軽快なリズムで覚えやすく、そう、昭和30年代から40年代へかけての頃は、必ずどこかでしばしば耳にすることができた。 この歌を記憶にある範囲で書いてみる。歌詞を読めば、なぜ「ドミニク」が今全く歌われないかが察せられると思う。 「♪ドミニク、ニク、ニク天使のような笑顔見せて、あの娘(こ)はいつも歌い続ける、神の教えを、ドミニクそれはめくらの少女、黒い瞳は閉ざされていた・・・」 おそらく当時この歌に日本語の歌詞をつけた人に悪意のあったとはまず考えられないし、現に世間でもこの歌はむしろ歌うことを勧めるムードだった気がする。 いや、あるいは学校でなく、テレビだったかもしれぬ。テレビで盛んに聞かせて、私たちの心に訴えようとしたような気もする。 少女ドミニクは若き修道女だったかもしれない。 「めくら」という言葉一つを言ったり書いたりすることを、盲目の人々に対する侮辱とだけ捕える短絡した考えが、こんな美しい歌を滅ぼしたのかと思うと、人間はどこまで偽善を善として通しきれるのかが、疑わしくなってくる。 「ドミニク」というやや哀愁を感じさせつつも、明るく美しい歌が、かつてよく歌われた時代があった。あの時代と現在とでは、果たしてどちらのほうが人間の心が健康なのか。 実は以上の文章、おととし、つまり2003年6月11日付の日記文面を加筆訂正したものである。 ネットで検索したところ、詳しいホームページが現われたが、史実までを詳細につづってあるから、外国や世界史に興味のない私は、知りたいところだけ読んで閉じた。 犯人はやっぱりNHKだった。「みんなの歌」というごく短い歌番組があり、そこで紹介されたのが初めとのこと。 この「ドミニク」という歌、今でもCDが出ているらしいが、歌詞は全く変えられている。 目が見えない人をあなどり、目の前で「めくら」と呼んではずかしめるような者が世間に果たしているだろうか。 私は平成初期のある日曜の朝、朝食のおみおつけを飲もうとしてだらしなく口からすべてこぼしてしまい、その時初めて顔の半面の神経がマヒしたことに気づいた。 顔面神経マヒという病名である。左右どちらかは忘れた。 以前、家庭教師をしたお宅に一軒の医院があり、失礼を承知で自宅へ電話したら、日曜にもかかわらずすぐ来るよう言ってくれた。 長ければ治るまで二、三年はかかるという。ただし、もう一軒鍼灸師の医院を紹介するから、自分の医院で毎朝ニンニクのにおいのする血管注射をし、併せてハリ治療を受けるよう指示された。 鍼灸師の先生は全盲の人だった。手さぐりで見事な治療を施すのにも驚いたが、治療室に現われる時の歩く勢いにはもっと驚いた。壁などに軽くふれるだけで、しっかりした足取りで歩む。 更に治療が終わって代金を払う時、五千円札と告げて渡すと、そばの金庫を見えるが如くてきぱき開けて、ピタリのつり銭をくれた。 こんなのにいちいち驚いている私が無知なのかも知れないが、庭には子供用自転車があり、所帯を構えていることがすぐわかった。 それにひきかえ、私はこの年になっていよいよ独居老人確定的な、情けない晩年必至のざまだ。 顔面神経マヒは一ヶ月ほどでほとんど治った。紹介してくれた医院の御医者さんには失礼ながら、これはハリ治療の卓効だと思っている。 それでも私は、将来この世からゴールデン・レトリバーのような盲導犬がいなくなる日が来ることを願っている。 テレビで過去二度ほど、レンズを使った人工眼の開発状況を見た。欧米で研究開発が進められていると言っていたか。 最近さっぱり見ないが、ハイテク産業日進月歩のこの時代、あの人工の眼の開発はどうなったか、時々口笛が吹けなくなった後遺症に気づくたび、明るい話題を提供して、楽しい雰囲気のうちに治療してくれた鍼灸師の先生を思い出しては、全盲の人ゼロの時代到来を願うのである。 日記予告/ 掲載中止した「元病棟ナースの怪異談」、後日掲載決定しました。 ただし、体験談を持つご本人に確認の手立てがありませんので、無断掲載になります。 差し支えある場合は何らかの形でご一報下されば幸いです。 脚色をまじえてつづります。 怪談ファンのかたにも請うご期待 ! ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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