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カテゴリ:回想
当たり前だが、ハガキなどの書簡に書かれた事柄は、その文面より過去のことをつづってあるのが普通だ。もちろん、デート日時の打診など、ごく近い後日の約束をしたためたものもある。
携帯電話メールに慣れっこになった今の若い者どもにはわかる由もないことだが、時間にズレを生ずるかつての恋愛は、それゆえにのちの思い出を痕跡に示す点で味わいがあった。 このクリスマス・カードも過去の事がらが書かれている。それも近い過去である。 その話を、まず私は例によって兄弟共に帰省した折のある夜、兄から聞かされた。 だが、このカードの内容を私が知ったのは、あるいは兄が彼女と別れたあとだったかも知れない。 ほかの人のことは無論わからないが、私たち兄弟は、恋愛成就して、ハガキその他の、形に残るものがあっても、淡白なもので、状差しに放り込んでそれきりということが多かった。 このカードが見つかったのは偶然である。 その話を書く。 兄は、恋人がいかに自分に対して想いを寄せているかということを、自慢したかったようだが、これまた兄が弟の私に語る話は、なぜかイヤミがなかった。 もちろん、話せないこともあったろうが、女々しく「あたしだけの大切な思い出」と、後生大事に保管し、心に刻むなぞという少女趣味はカケラもない。 兄は語り始めた。 「おい、レーモン・ルフェーブルって知ってるか ? 」 私は知らなかった。何しろ異性に縁がない。ムード・ミュージックなぞには関心がなくて当たり前だ。 この当時、ほかにもポール・モーリア楽団などが有名で、昭和40年代から50年代に学生時代を過ごした人々の大半が、この楽団と演奏される曲の数々を知っていたと思われる。 兄の自慢話は、聴いてたちまち気に入った曲の録音テープか何かを、彼女に聴かせて二人して気に入り、その曲のレコードを彼女が兄にプレゼントするまでの聞くも涙(rainbowmask註 / アハハ)のラブラブ・エピソードだった。 彼女はこの長ったらしい曲名を、兄とのデートが済んで別れて帰宅したとたん、忘れたらしい。 そのいっぽうで、彼女は兄へのクリスマス・プレゼントに、マフラーを編んでいた。結果、これがうまく編めなかったのか間に合わず、件(くだん)の曲のレコードのプレゼントとなった。 兄の自慢話は全く色気がないので、クリスマス・カードにつづられた、彼女の文面を抜いて、クリスマス恋愛ドラマとする。 ☆ “ 恋のアランフェス “ 何かわかる ? 題名のわからない曲のレコード捜すのは難しかった・・・・・ どうしたと思う・・。店員さんの前で、私もうろ覚えの曲のふしを、いっしょうけんめい歌って、やっとつきとめたんです。 “ 恋のアランフェス ” ・・・・・・・ 男の店員さんと女の店員さんが聞いてくれる前で、音程も不確かに歌うのは、とても恥ずかしかったわ。三回くらい繰り返したときやっと、男の人の方が “ 恋のアランフェス ” じゃないか ? っていってくれたときは、ポットしました(rainbowmask註 / ホッとしたのにあらず、にわかに恥ずかしくなったのだと察しられる。少なくもあの時はうらやましい兄貴だったぜ)。 でもよかった。あの曲がわかって・・・・・どうしても今日までにマフラーがまにあわなくて、ギリギリになって町へとんでいったわけです。☆ それでも別れるカップルは別れる。兄が一生の伴侶と選んだのは、その時まだ互いに知る由もない、東京都在住の婦人だったわけである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.12.23 01:00:34
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