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カテゴリ:雑記・会話
村松「大きな声では言えないけどさ、俗に『生蕎麦(きそば)』ってのれん出しててもさ、ライス注文するとたいてい出て来るんだよ」
店員さん「あの、ライスありますが・・」 夕子「ほら見なさい。あ、すみませんが、メニューで決めたらまたお願いします」 店員さん「かしこまりました。ごゆっくりお決めになって下さい。あのご主人様でしょうか、半ライスもありますので、よろしければどうぞ」 村松「あ、こりゃどうも、ご親切に。それではメニュー拝見します」 ・・・・・ 夕子「ばあか。あなた、若いきれいな店員さんみるとすぐ調子に乗るんだから」 村松「そんなつもりじゃ・・・」 夕子「でもここ、二人掛けのテーブルあってよかった」 村松「何んにする ? 」 夕子「はこ天。いろいろな天ぷらが混ざったの」 村松「うえっ ! いきなり豪華版に決めやがった。さすが食堂に慣れてるな。よし、おごりがいがある。決まりだね」 夕子「あなたは ? 」 村松「じゃあ、野菜はこ天にする」 注文し、やがて運ばれて来る。 夕子「おいしい ! あなた、このお店知ってたの ? 」 村松「実はいささか懐かしいんだ。もう平成13年だから、10年余り前だな。お袋と、あのさ、俺たちのあいだでは『杉田のおばさん』と呼んでいた人のところを、その時も久しぶりに訪れてさ、ちょうど昼どきだったけど、こっちはすぐ辞し去るつもりだったんだけど、おばさんが昔から気のつく人でさ、『お昼食べよう』って、ここへ誘ってくれたんだ。おばさんと会った最後だった」 ・・・・・ 夕子「何よ、急に黙ってしまって。話の続き聞かせてよ」 村松「いや、ついつい箸の運びが忙しくなって・・・口にものをつめてしゃべることになりそうだから・・・」 夕子「ゆっくりでいいわよ。あたし、あとは夜道を車で帰るだけだから」 村松「お袋が主婦一筋で来ただろ。しかも妙に凝ったり、逆に肉焼いてゴマカすなんてんじゃなくて、いわゆる田舎料理だけど、この天ぷらも何んか印象としては、しょっちゅう食卓にのぼってたってくらい、よく作ってくれたって記憶だ」 夕子「ふふ、あたしも思い出した。自慢交じりになるけど、お母さん、あたしが漬物やるって言ったら、とてもうれしそうな顔して見せてくれたわ」 村松「お前さんの漬物、ホントお袋のと味が似てたもん」 夕子「・・・・・」 村松「そうだ ! 思い出した ! 」 夕子「んもお、びっくりするじゃない ! 何よ」 村松「うん。いや、今はやめとこう。食事の時にする話じゃない」 夕子「ムカデ ? 」 村松「いや、ムカデはまだ出ないから、それはそれでやれやれってとこだけど・・・」 夕子「大丈夫よ。家(うち)の中、散らかってるんだから、虫でも出て困ってるって話なら平気。何 ? 羽アリとか羽虫 ? 」 村松「いや、今年は羽アリはそれこそ一匹も入って来ないんだけど、話少し長くなるかも知れないけど・・・去年の夏までは全く見なかった妙な虫が夜になると特に教室中を我が物顔に飛んだり歩いたりしてるんだよ」 夕子「どんなの ? 」 村松「大きさというか長さはせいぜい2~3mmくらいで、楕円形みたいな形で・・色は茶褐色かな」 夕子「台所のお米なんかは見てみた ? 」 村松「ああそれだ。最初は米を食い荒らすコクゾウムシかと思ったんだよ。親父が食中毒に対して全く無神経で、実際胃も驚くほど丈夫なんで、衛生管理への不安は俺はずっとあったんだ。ただ、わかるだろ」 夕子「ええ。口出しすると、神経質過ぎるってすぐけんか腰になるんでしょ」 村松「そう。だから食べ物のことで、俺が早め早めに期限の来たものを捨てようとすると、『そんなことでは生きていけないぞ』なんて、説教めいたこと言って、10年余り前から食べ残した佃煮なんかも、箱ごと次々に冷蔵庫に積んでいくんで、一旦あきらめた。で、親父が死んでから、冷蔵庫の中の腐った食品はみんな生ゴミとして出すしかなかったんだけど、それでもこの夏はその妙な虫が発生したから、とりあえず古い米を捨てた。けど、虫は相変わらず夜になると、教室や寝室に出やがる。6月に大掃除した時はホントに一安心かと思ったけど・・」 夕子「コクゾウムシはそれこそ典型的って感じでお米にたかると思ったけど」 村松「親父が死んでから、ようやく台所を自在に使えるようになってさ、ヘルパーさんにお袋の食事を任すことになったんだ。食費が見事に減ったし。で、ヘルパーさんも初めのうち、余った米の袋を流し台の下の収納庫に入れてたけど、ある時コクゾウムシがわいてるのに気づいて、それ以後米は冷蔵庫にしまうようにしてくれたんだ」 夕子「それ去年から今年初めのことよね」 村松「うん。で、話をまとめると、今発生している虫はコクゾウムシではないみたい。ネット検索でそれらしいとめぼしをつけただけだけど、あるいは『シバンムシ』という奴らみたい。家(うち)の中も一階より二階のほうがはるかに室温が高いから、虫が下から上がって来るとも考えたけど、二階の部屋の不潔さが一番の原因かも知れないな。ただね、台所の収納庫にも前からおびただしい数の虫の死骸があるから、初めに古い米を捨てて、次にお袋が多分だいぶ前に漬けたポリ容器の漬物も捨てた。その時米ぬかの袋に例の虫が入り込んでるのも見つけたから、これも捨てた。でも二階のはなかなか駆除出来ない」 夕子「米ぬかってことは・・・その虫はほかに何か食い荒らすかどうか、わかったの ? 」 村松「ひとことに言うと乾物(かんぶつ)かな。乾麺もそうだし、だしの素もそうみたい。もっと台所の収納庫みてみる必要があるかも。いや、とにかくまいった ! 」 夕子「お母さんの漬物にはついてたの ? 」 村松「シャベルでビニール袋に移しながら見たけど、ここにはいなかった。もちろんぬかみそは腐っていたし、大根かな、これも茶色に変色してたけど、ねっとりシャベルにつくくらい湿り気があったせいか、フタを軽くだけどしてあったせいか、ここには一匹も見つけられなかった。漬物の容器のすぐそばの米ぬからしき袋にたかってた」 夕子「ふふ、全然関係ないこと連想しちゃった。あ、ごめん不謹慎だから、これ取消し」 村松「お前さんはかなり言葉遣いに神経つかうから構わないよ。何から何を連想したの ? 」 夕子「ふふ、じゃあ言うわね。今あなた、『米ぬからしき袋』って言ったでしょ。『太平洋の嵐』でどお。もちろんあとの映画でも同様のシーンあったけど・・・」 村松「ああ、そうか。・・・『らしき』ってセリフが入るのは覚えてるけど、しばらく見てないからなぁ。うろ覚えだ」 夕子「チャレンジする ? 」 村松「よし。じゃあ、俺、通信室のセリフから言うよ。まず途中でダメになるけど。では。『偵察機より無電 ! 敵らしきもの10隻見ゆ』」 夕子「いいわよ、それで。じゃ。『敵らしきものじゃわからん ! 艦種知らせと電報打て ! 』」 村松「ここからのセリフやシーン忘れた」 夕子「・・・あたしもあのあわただしい艦内のセリフは覚えてないわよ。とりあえず巡洋艦利根索敵機から無電があったシーンに移って、あ、映画では偵察機って言葉だったわね。そっちに集中でいいでしょ ? 」 村松「オッケー。どっちから行く ? 」 夕子「じゃあたしね。『敵兵力は巡洋艦5、駆逐艦5』」 村松「それじゃ、ここからやや時間あってってことで。『敵は艦隊の後方に空母2隻の機動部隊を伴う』。ふうー、疲れた」 夕子「まずまず健在じゃない。・・ところで話題を元に戻すけど、米ぬかの袋らしきものって、確かめなかったの ? 」 村松「うん。例の虫が輪ゴムでしっかり閉じた袋の中にたかってて・・。いやだから、別のビニール袋で包んで、ゴミ出しに出しちゃった」 夕子「そう。人ごとみたいになって悪いけど大変ね」 村松「一つこじつけするとね、例の庭木ほとんど切られてから、にわかに発生したっていうタイミングだね。ま、とにかく出来るだけあちこち掃除してみる」 食事終了。 夕子「もう一度お宅に寄っていい ? 」 村松「もちろん大歓迎。で、今度いつごろ ? あ、まだわかんないな」 夕子「違うの。ここで別れるんじゃなくて、あなたの家(うち)に一旦戻ってからってこと」 村松「答え同じ、大歓迎。けど、遅くなって身体に差し支えなければいいけど」 夕子「うれしい返事してくれるのね。・・あなた、随分まいっているはずなのに、何んだか人がまるくなったみたい」 村松「そうかなぁ。相変わらず人間嫌いだけどね。ま、お前さんは格別の客だ。じゃ行くか」 帰宅。すぐに二階へ。 村松「ほら、いるだろ」 夕子「昼間でも明るいのに、とすると夜行性ね」 村松「ところで、わざわざまた寄ってくれたのって、何んか話ある ? 」 夕子「うん。さっきの日本の小型原爆と昭和天皇のこと」 村松「ああそうか。忘れてた。でもこの日記はいっぱいだな」 夕子「そう。パート4ね」 お粗末でした。続きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.08.08 00:14:04
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