蒼い旅人

初めての海外旅行が一人旅になったことで怖さがなかったといえば嘘になる。
しかし、そこは「死ぬことはないさ」というように考えるようにしていた。

そして、一人で行くとなれば、旅程のルートは自分の思いのままとなった訳で
それはそれは楽しい作業だった。
僕の心の頼りにしていたのは「地球の歩き方　ヨーロッパ編」。
当時は今と違って他に自由旅行の参考になる本はほぼなかった時代である。
ましてはインターネットもない時代だったので「地球の歩き方」の情報は非常に貴重だった。

その「地球の歩き方」にはヨーロッパ一周旅行のモデルルートなどの指南があった。
今の旅行書でもそうだろうけど、日本からは最初ロンドンに入るのがよいとされている。
それは最初は比較的なじみのある英語を使う国がいいという発想からだ。

ただ、僕は子供の頃読んだ漫画「サイクル野郎」のイメージが強く残っていた。
その「サイクル野郎」は自転車で日本一周するという夢のある漫画であったが、
その中で冬に向かって北にコースを取ることがあり、それを”無謀”！というシーンがあった。
そのイメージがあったので、ヨーロッパ一周も暖かい南から北上した方がいいのではないかと
漠然と考えた。


　　　　「サイクル野郎」　１巻

昔、「夜のヒットスタジオ」という歌番組に山口百恵さんが出演していたとき、
ドラマ「赤い迷路」でパリ帰りの山口百恵さんに対して、司会の吉村真理さんが
「パリは寒かったでしょう」
と尋ねると、山口百恵さんも
「すごく寒かったです」
と答えていたと記憶している。
たしか１０月ぐらいだったと思うので、パリ（＝ヨーロッパ）は寒いという印象が僕には残っていた。
だから、あったかくなってくる頃にパリに行ったほうがよいと思った。

それと、買い物とお土産はパリやロンドンが多くなるだろうとの予測もあり、最後にパリ、ロンドンと
行くことにした。
そしてヨーロッパ一周するためには入国は必然的にスペインから入り、
反時計回りに回るということに決めた。

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