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カテゴリ:天璋院篤姫
今夜(6月15日)のNHK大河ドラマ「篤姫」24回目のメインは、将軍の家定(堺雅人)と米国総領事タウンゼント・ハリス(ブレイク・クロフォード)との会見です。
家定と篤姫(宮崎あおい)との婚礼があった日から10ヶ月ほど過ぎたある夜、家定は篤姫の許に「おわたり」し、彼女にハリスとの会見についての不安を打ち明け、「将軍として威厳を持って会見するにはどうすればよいか、何か思いついたら教えよ」と相談を持ちかけます。篤姫に心を許し信頼しての相談でしょう。彼女はとても嬉しくなり、将軍として相応しいハリスとの対面方法を考案せねばと張り切ります。 篤姫は、ハリスが平伏して将軍に謁見するのではなく、立ったままで会おうとしていることを知り、老中首座の堀田正睦(辰巳琢郎)に命じてハリスの背丈を調べさせます。その結果、ハリスの身長が6尺(約1.8メートル)ほどと分かり、大奥の女中たちに謁見室へ大量の畳を運び込ませます。家定が坐る位置に畳を何枚も重ねれば、背の高いハリスを見下ろし、将軍としての威厳を示すことできると考えたのです。 会見当日、ハリスは靴をは履いたまま謁見室に入り、立ったまま将軍に挨拶しますが、家定は10数枚重ねられた畳に据えられた床机に座ってハリスを迎えます。そして、ハリスの挨拶を受けた後、家定はすっくと立ち上がり、まるで歌舞伎役者が大見得を切るような仕草をして返礼の言葉を述べます。後で彼が篤姫に語った話によると、ハリスの挨拶を聞いているとムラムラして来て、ついいつものように「うつけ」の振りをしてしまったとのことです。さて、ハリスはそれを見てどう思ったことでしょうかね。 なお、史実としては、将軍・家定は安政4年10月21日(1857年12月7日)に米国総領事タウンゼント・ハリスと江戸城で会見していますが、この会見の模様について、ハリスは自らの日記(坂田誠一訳『日本滞在記』下巻、岩波文庫、1954年10月) でつぎのように記録しています。 江戸城内の大謁見室で「沢山の彫像のように静座している気の毒な大名たち」の傍を通って単独の謁見室に入り、一人の侍従の高声な「アメリカ使節!」との声を聞いた後、西洋式の礼法に則って2回頭を下げて大君(将軍のこと)の前に進み出て、「陛下よ。合衆国大統領よりの私の信任状を呈するにあたり、私は陛下の健康と幸福を、また陛下の領土の繁栄を、大統領が切に希望していることを陛下に述べるように命ぜられた。私は陛下の宮廷において、合衆国の全権大使たる高く且つ重い地位を占めるために選ばれたことを、大なる光栄と考える。そして私の熱誠な願いは、永続的な友誼の紐によって、より親密に両国を結ばんとするにある。よって、その幸福な目的の達成のために、私は不断の努力をそそぐであろう」と挨拶を行います。 ハリスの挨拶が終わると、「短い沈黙ののち、大君は自分の頭を、その左肩をこえて、後方へぐいと反らしはじめた。同時に右足をふみ鳴らした。これが三、四回くりかえされた。それから彼は、よく聞こえる、気持ちのよい、しっかりした声で、次のような意味のことを言った。/『遠方の国から、使節をもって送られた書翰に満足する。同じく、使節の口上に満足する。両国の交際は、永久につづくであろう』」。 また、ハリスの通弁官として江戸城に同行したヘンリー・ヒュースケンは、彼の日本見聞記(青木枝朗訳『ヒュースケン日本日記』、岩波文庫、1989年7月)の中で、会見した将軍にいてつぎのように記録しています。 「奥に、国王陛下、すなわち日本の大君が床几のようなものに坐っていた。しかしそのあたりは暗い上に離れているので、ほとんど姿が見えない。天井から垂れ下がったカーテンが顔を隠している。ひざまずいている人たちにはよく見えるが、直立しているわれわれには無理である」としています。そして、ハリスの挨拶に対し、「大君は三度床を踏み鳴らし、そして日本語で答えた」そうですが、通訳森山多吉郎のオランダ語の訳によると「はるか遠国より使節に托して寄せられた書簡をうれしく思う。また、使節の口上もよろこはしく聴いた.末永く交誼を保ちたいものである」ということであっとしています。 今回のドラマに描かれたように、家定が何枚もの畳を重ねた上に坐ってハリスたちと会見したわけではないようですね。また立ち上がって芝居がかった大袈裟な身振りで返礼の言葉を述べたとも書いていません。おそら家定は、緊張して自然と首や足が動いてしまったのでしょうね。 さて、今夜の篤姫ドラマでは、紀伊の慶富(松田翔太)を推す近江彦根藩の井伊直弼(中村梅雀)らと一橋慶喜(平岳大)を推す越前福井藩主の松平慶永(矢島健一)らの争いが激しくなり、そんな状況下、幾島(松坂慶子)に島津斉彬(高橋英樹)から慶喜を家定に合わせるようにせよとの密書が届きます。それで、家定が篤姫の考案した畳積み重ねの会見方式のアイデアを非常に気に入り、「礼をしよう。ほしいものは何なりと申せ」と言ったとき、彼女は家定にハリスとの会見の場に慶喜を同席させてほしいと頼み込み、承諾してもらっています。この家定の優しい配慮に篤姫を思わず涙ぐんでしまいます。 しかし、家定は会見の後で篤姫に「ますます慶喜が好きでなくなった」と言い、今後もしかしたら国内が開国派と攘夷派に分裂するかもしれず、そんな日本国の未来や徳川宗家のことを慶喜は真剣に考える人間とは思えないと言っています。 また、慶喜が会見の場に同席していることを知った本寿院(高畑淳子)が、「御台所が仕組んだに違いない」と怒り出し、廊下ですれ違った篤姫に掴みかかっています。いよいよ将軍継嗣を巡っての対立は激しさを増すようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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