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カテゴリ:天璋院篤姫
今夜(8月3日)のNHK大河ドラマ「篤姫」31回目のタイトルは「さらば幾島」で、天璋院(宮崎あおい)の身近にこれまで仕えて彼女を支えてきてくれた幾島(松坂慶子)との別れが描かれています。
井伊直弼(中村梅雀)の「安政の大獄」は激しさを増し、その厳しい詮議の手は京の近衛家にも及ぶようになります。近衛家の老女の村岡(星由里子)は京の獄に繋がれ、近衛忠熙(春風亭小朝)は左大臣の職を辞して落飾せざるを得なくるのです。 近衛家の老女の村岡は、天璋院が将軍家への輿(こし)入れしたときに彼女の母親代わりとなっていろいろ尽力してくれた恩ある人です。天璋院は、自分を母として慕う若き将軍・家茂(松田翔太)に村岡を救ってくれるように頼もうとしますが、滝山(稲森いずみ)が天璋院の身を案じて「それは井伊様の思うつぼになります」と諌めます。また、「村岡様のことは天璋院様にとって私事(わたくしごと)でございます。その私事で公方様に助けを求められますと、公方様は天下の将軍としてのお立場がございません」との正論も述べます。大御台所として公私の区別を明確にすることの大切さを伝えているのですね 村岡は江戸に護送され、信州松本藩主の戸田光則の屋敷に預けられます。そこで天璋院はあることを思い付き幾島を呼びますが、そのとき幾島は侍女に行李を持たせて天璋院の前に出てきます。彼女は天璋院の思いをあらかじめ察していたのです。そんな幾島は、天璋院の代わりにその行李の品を持って戸田の屋敷に訪れ、村岡にそれを手渡します。 詮議の日、村岡は真っ白な装束で評定の場に出てきますが、それは天璋院が徳川家定(堺雅人)との婚礼のときに纏ったものでした。そして、「これは大御台所の天璋院さんより拝領したお品であり、いわば葵の御門と同じものでございます」と胸を張って言うのでした。これには詮議の奉行も大いにひるみ、結局彼女は30日の押し込めの後に無事に放免されることになります。 この村岡の白装束の件のように、幾島は天璋院の思いをいつも先回りして察してくれました。そんな幾島がなぜいま天璋院から暇をもらおうとするのでしょうか。天璋院の疑問に幾島は次のように答えます。「天璋院様は徳川家の人間です。しかし私は近衛家、島津家との絆を第一に考えます。そのような人間はもしものときには天璋院様の足手まといとなりましょう」。こうして幾島は天璋院の許から去っていくのでした。 さて、史実としては幾島はいつ頃大奥を去ったのでしょうか。畑尚子『幕末の大奥 天璋院と薩摩』(岩波新書、2007年12月)によりますと、幾島は元治元年正月15日(1864年2月22日)に「体調を壊し、戸塚静海の診察を受ける。慶応元年(一八六五)は正月から長患いで、閏五月頃に奉公を辞めて天璋院の元を去った可能性が高い」とあります。 また、「朝日新聞」西部地方版の5月23日に「篤姫支えたおごじょ」という記事が載り、NHK大河ドラマ「篤姫」の時代考証を担当された鹿児島大学教授の原口泉氏が幾島の生没年についてつぎのようなことを紹介しておられました。 「幾島の招魂墓が鹿児島市内の唐湊墓地で発見されたのである。鹿児島大工学部の友野春久さんが3年前にその墓を調査されていた。 早速私も墓碑文を確かめるため現場に行って、驚いた。何と原口家の墓と百歩も離れていない。幼い頃からなじみの場所に幾島の魂は眠っていたのだ。身近に大切なものを発見することこそ、まさに人生の喜びである。 碑文によれば、幾島は『朝倉糸』。父は薩摩藩士朝倉孫十郎、母は秋田藩士阿比留軍吾の娘、民。糸は文化5(1808)年6月18日に生まれた。父孫十郎は江戸や大坂藩邸の留守居からお側御用人まで勤めた重役であった。 糸は、13歳から郁姫付きの女中として京都の近衛家に仕えること30年余り。近衛家では「藤田」という名でお側女中から御年寄を勤めた。郁姫が嘉永3(1850)年、薨(こう)ずると尼(得浄院)となり、近衛家にとどまって亡き主(常興善院)の菩提(ぼだい)を弔っていた。 篤姫が将軍家定に輿(こし)入れするため江戸へ向かう嘉永6(1853)年、登用され、大奥ではお局役になった。その時からの名が幾島である。没年は明治3(1870)年4月26日。東京・芝の大円寺に葬られた。数えで63歳だった。 墓を建てた人は朝倉景春(1810~78)。幾島より2歳若いから弟であろう。景春は、幾島の死に際して、藩から賜った弔慰金50円のうちから招魂墓をたてたのである。 幾島の招魂墓を眺めていると、嫁ぐこともなく、子もなさず、近衛家と将軍家に仕えた姉の一生を後世に伝えたいという弟の熱い思いが伝わってくる。 篤姫と同じように幾島もまた、激動の時代をひたむきに生きた、薩摩おごじょだったのである。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年08月04日 00時01分15秒
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