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カテゴリ:小説・日本
宮部みゆき先生が、江戸時代の妖怪、鬼にまつわる話を描いた短編集です。
怖がりなくせして、妖怪話は好きな私です。 妖怪を描いたものでも、それ自体の怖ろしさを描写したものは苦手です。 『あやし―怪』の中にもそう言う話は入ってます。 でも私が好きなのは、人の在り様を象徴するかのように描かれている妖怪話で、この短編集の中にもそう言う話が多いです。 中でも私が一番好きなのは『安達家の鬼』。 主人公は店の主人に嫁ぎます。 お店はしっかりしてますし、旦那さんは良い人ですし、どこかの店のお嬢さんをお嫁にもらっても良さそうなものですが、主人公が嫁いだのはひとえに旦那さんの病気のお母さんの面倒を見るのに良いだろうから、と言う理由。 前に奉公していた店でも彼女は大旦那さん(おじいさん)の世話をしていたので、それをかわれてです。 で、旦那さんのお母さんですが、人を見る眼が凄くあると言う評判。 実はお母さんのそばには鬼がいるのです。 何故そう言う事になったかを主人公に話して聞かせるおばあさんが、可愛くて良い感じ。 この鬼ですが、人によっては見えなかったり、匂いだけしか感じ取れなかったり、または怖ろしい姿に見えたりするんですね。 見る人の在り様がそのまま、その人が見る鬼の姿を取るんです。 ここが面白いなと思いました。 読後感も良いです。 もう一編、『時雨鬼』。 とあるお店でご奉公している主人公、その彼女の男は、彼女に別の働き口をしきりに勧めている。 五倍の給金がもらえる、茶屋だがお客の相手はさせない・・・。 主人公は男を信じたいのですが、一抹の不安もあり、今の店を紹介してくれた紹介所の主を訪ねます。 ところが主は居ず、いつの間に結婚していたのだか、おかみさんだという女が居る。 主人公は事情を話すと一笑に付される、そして昔、自分もそうやって騙されたのだという話をされる。 しかし主人公は意地もあって、自分の男は違うと言い張る。 それでおかみさんは鬼を見た話をするわけです。 結局このおかみさんと言う女も相当な悪人なんですが、主人公は“鬼はなんだったんだろう”と考えるわけです。 そして未だ男の話に決心をつけられない自分を思う時、“鬼”の存在に心がとらわれている。 こちらはすっきりしない読後感ですが、私は面白いと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年08月02日 14時56分03秒
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