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カテゴリ:小説・海外
最近、復刊のミステリーが多くて嬉しいです。
翻訳ミステリーはビックネームの著者、もしくはシリーズ、そして話題作でないとなかなか重版しなくて、書店にもほとんど置いてない。 それがこうして読めるようになるのは幸せです。 あらすじはamazonからのコピペ。 イギリスの田舎町。 病弱なマシューは、優しく利発な姉に守られ、幸せな少年時代を過ごした。 秘密の隠れ処、化石探し、暗号の日記、子供に干渉しない両親、高い知能を隠す姉、死。 そして今、二人は昏い密室で語り合う…。 過去と現在が交錯する中で明かされる“真実”とは。 12歳でW・H・スミス文学賞を受賞、22歳で本作を上梓した早熟の天才による、幻惑と郷愁の魔術的小説。 マシューが縛られている私に、「ソフィー、嘘はイヤなんだ。」と語りかけて始まる現在と、マシューの視点から描かれるソフィーとともに過ごした過去が、交互に書かれる構成。 現在のマシューは、ソフィーの真実を語らせようとしている。 しかし語り部の“私”には、どう語れば、マシューから解放されるのかが分からず、マシューとの会話の中で、それを探ろうとしている。 過去のマシューは、母と姉のソフィーと暮らしいる。 父親はいるが、めったに家に帰らない。 母は一階の一部屋からほとんど出てこず、マシューの面倒はソフィーが見ている。 ネグレクトに近いかな。 たまにマシューの事で口を出すと、体裁を気にする内容で、マシューの気持ちは何も考えてない。 マシューは時々悪夢を見る、顔の無い“グレディーじいさん”。 ソフィーとマシューは学校以外の時間はほぼ二人で過ごす。 一家が住んでいる家は広い庭があり、二人はそこで遊ぶ。 この二人の遊びの描写が素晴らしい。 子供であれば、自分もこうやって過ごしたいものだと思う。 そのシーンが素晴らしいので、裏に隠れている闇の深さがいっそう際立つ。 ソフィーは利発な少女だが、それを敢えて隠している。 その方が何かと便利だから。 彼女は弟であるマシューを守っている。 マシューの子供時代にとって、ソフィーだけが世界の全てと言えるかもしれない。 しかしソフィーにとっても、マシューは、「守る」と言う形をとることで、生きづらい環境を生き抜いていく為に必要な存在だったかも知れない。 マシューを守るために、生きていかなくてはならない、生きていける。 共依存だったのではないかと、大人のマシューの箇所を読むと感じる。 二人はいつまでも子供ではいられない。 いつまでも子供でいたかったのは、ソフィーの方だったのかも知れない。 ソフィーは、利発と言えどもやはり子供で、しかも非常に狭い世界で生きている。 彼女には、未来ある大人の世界を提示する者がいなかった。 だから彼女は、彼女のまわりにいる大人=母だと思うのだが、のようにはなりたくないと思う。 それも“大人”な事柄を経験した後で、そう思う。 麻薬やセックス、けれど彼女はそれに溺れるほど愚かではなく、それが返って哀れだと思う。 時に人と言うのは、愚かな方が生き易いと言う事があると思う。 色々な謎に「これはこう言う事です」とはっきりと明かさず分かりづらいので、そう言うのが苦手な人には向いてないかもしれません。 最後にはゾッとさせられますが、前にも書いたように、二人の子供時代の関係からすれば、ストンと理解できる事でもありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年01月12日 22時35分38秒
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