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2009年03月08日
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081122~24 仙丈ヶ岳(4)

 下山は真っ暗だった。しかし昂揚した気分で小屋に戻り、寝るための準備をする。夕食を摂り、持ってきた本を読む。樋口明雄の「狼は瞑らない」。面白かったが、寝袋から手を出すために寒くて長く読んでられなかった。小便で外に出るとガスがすっかり晴れて凄い星空だった。遠く、街の夜景も美しい。写真撮ろうかな?と思ったが、億劫なので止めておいた。去年辺りまでなら、きっと放っておかない光景である。絶対に写真を撮っている。こういうのが面倒に感じるのは体力が落ちたせいもあるだろうが、何よりテンションの低下であると思う。きっと、慣れてしまったのだろう。新鮮味が薄れているのが分かる。それは悲しいことだが、これだけたてつづけにアルプスに来ているのだから無理もない。明日も早起きなのだが、まだ興奮が冷めず寝付けない。iPodで音楽を聴く。アルヴォ・ペルトのスターバト・マーテル。バーバーのアダージョ。こういう環境で聴くと美しさがますます際だつ。怖いくらいの美しさだ。シベリウスの交響曲も聴こうかと思ったが、本当に凍えてしまいそうで止めておいた。それにもう眠い。

 24日3時起床。予報では天気が悪かったが…外に出てみると満天の星。ようし、晴れている。支度して再び頂上を目指す。最初ヘッドライトを使っていたが、消してみても月明かりと星明かりでトレースが見える。薄明かりだけの雪山歩きもなかなか乙なものである。頂上に着いてみるとすでに東の空が明るい。日の出まであと少し。早速撮影を始めた。いい景色だ。昨日の夕方ガスに巻かれた時には少しこの山を呪ったものだが、今は最高に好きになっていた。

10-2700-15日の出.jpg
仙丈ヶ岳山頂からの日の出

 撮影が一段落し、改めて周りを見渡した時、あっと思った。北アルプスだ…穂高に槍、そして鹿島槍、五竜岳…遙か彼方の峰々が朝陽を浴びてピンク色に染まっている。ああ、オレが当初計画していた山だ…晴れてるやんけ…この想いは…きっと後悔というのだろう。この仙丈ヶ岳に来て悔いはない。それどころか大満足である。しかし…やはり、オレはあそこで鹿島槍や五竜岳を眺めたかったのだ。ちょっと寂しい気分になったが、それでも南アルプスの山々に囲まれてオレは幸せだった。

12-2700-21北アルプス.jpg
北アルプスを遠望

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朝陽に浮かぶ仙塩尾根

14-2700-35甲斐駒朝日大.jpg
甲斐駒ヶ岳

11-2700-18朝焼け北岳と富士.jpg
北岳と富士山

 さあ、下山である。9時前に小屋を出た。見上げると雲が多くなってきた。雪になるかも知れない。当初甲斐駒ヶ岳にも登ろうかと考えていたが、止めることにした。今日のうちに戸台の駐車場まで下ってしまおう。1時間程で小仙丈ヶ岳。もう少し下れば森に入る。この山岳風景ともお別れだ。一息ついて景色を眺める。いつの間にか空は雲で覆われている。振り返ると仙丈ヶ岳のピークが見える。心の中で「ありがとう」と言って下り始めた。さらに一時間ほどで五合目・大滝の頭に到着。ここまで2時間、6時間かかった登りとはえらい違いである。

15-R0016251甲斐駒とオレ.jpg
下山中。みるみる曇ってきた。

 12時9分、北沢峠に到着、ここで大休止。デポした荷物をザックに入れる。重い。置いていた杖、的廬も忘れずに持って行く。雪が降り始めた。行こう、一気に戸台まで。戸台川までの森は素晴らしかった。登りの時は夜だったので分からなかったが、巨木が多く、厚い苔が広がるなんとも立派な森だった。考えてみればこの道は、もう殆ど人が通ることがない。いつか夏にまた来てみたい。

16-R0016284巨木.jpg
でかい樹がいっぱい生えていた。

 14時40分赤河原分岐、ここから河原歩きである。森を出ると雪がまともに降りかかる。もう吹雪といってもいい降り方である。疲れた体に鞭打ってどんどん進むが石が濡れて滑り、歩きにくい。あっ、そういえばこの後「壇渓を跳ぶ」ゴッコせにゃならん!しかも夕闇が迫ってきていた。暗くなっては大変なので更に急ぐ。なんとか渡渉も終えたが、実はこの時が今回の山行で一番怖かった。戸台の駐車場に着いたのは17時20分で、もう真っ暗だった。

 久しぶりにアトレー号と対面、急いで支度をして林道を走る。この辺りでは雪ではなく雨になっていた。林道の出口当たりで温泉を見つけ、早速入る。風呂は半ば諦めていただけにありがたい。一般の観光客が結構いて、老人のようにヨロヨロと服を脱ぐオレをじろじろ見ていた。冷え切った身体を湯船に浸ける。極楽。まさに言いようのない心地よさ。今回の山行を振り返る。初日北沢峠まで7時間、2日目に仙丈小屋まで9時間、頂上まで更に1時間、登りの合計17時間。3日目、北沢峠まで下るのに3時間、戸台まで4時間半、下りは計7時間半。一つの山にこれ程の時間と労力をかけたことは、かつてないことだ。ホンマ、大変やった。よう頑張った。目を閉じるとあの時の光景がよみがえった。仙丈ヶ岳の頂上でガスが晴れた時のあの光景…そしてあの時の、感情の昂ぶり…ええ山やった…目を開けて、今度は小さく口に出して言ってみた。「ええ山やった」。

09-2700-13富士と朝焼け.jpg





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最終更新日  2009年03月08日 10時16分11秒
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