テーマ:山登りは楽しい(12033)
カテゴリ:日本アルプス登山記
081122~24 仙丈ヶ岳(3)
何はともあれ、小屋に着いた。誰もいない冬季小屋で、まずはコーヒー。続いて昼食を摂ると眠くなり、仮眠した。15時前に起き、トイレで軽量化を済まして、いよいよ登頂である。本来なら小屋に入る前に登るはずだったが、疲れすぎていて後回しになってしまった。 仙丈ヶ岳山頂への道 既に辺りは夕方の気配であるが、相変わらずの好天だった。綺麗な夕景を期待して登り始める。気力も体力も回復し、テンションも高い。と、その途端、ガスが湧いて一瞬にして辺りは真っ白になってしまった。なんてこった…そんな馬鹿な。一気に気力が萎えた。やることが完全に裏目であった。朝日を迎えるために頑張った夜間登山に失敗、そのために疲れ果てて小屋で休んでいるうちに天候悪化。バカ丸出しだったが、オレは頂上を目指した。明日は天気が崩れて登頂できないかも知れない。ここまで来て頂上を踏めなかったのでは悔しすぎる。 16時、仙丈ヶ岳に登頂。頂上は「仙丈ヶ岳 3033m」の標識があるだけで、やはり真っ白だった。「ま、こんなモンか」強風にさらされる極寒地ではあるが、とりあえず登頂記念の一服だ。景色は見えなくても、一生懸命頑張って登ってきたのだから気分は悪くない。それにしても南アルプス2連敗か…気分は悪くないが、何かやるせなさでいっぱいだった。標識を入れて記念撮影を済ませ、さて帰るか、と腰を上げるとなんだか泣けてきそうだった。ピッケルを握りしめる。登る時もそうであったが、強風の雪稜歩きはかなり危ない。しかもガスで視界がきかない上、帰りは暗い。気も緩んでいる。大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。さあっ、泣き言は許されんぞ、と心で渇を入れた。 その時だった。日没間近の16時20分、辺りが明るくなった。真っ白だったガスが黄金色に輝いている。自分の周りがキラキラに輝いているのである。ナニゴト?と目線を上げると、みるみるガスが流れて太陽が姿を現した。そして、辺りの山々も… ガスが晴れていく…仙丈ヶ岳山頂にて キタァァァ!!!!(←指定・特太ゴシック・80ポイント) ピッケルをその場に突き刺し、オレは「轟!」と吼えた。そしてカメラを取り出し、写真を撮りまくった。ファインダーを覗いている目が曇る。哭いていた。「うおーっ」とか「があーっ」とか叫びながら、心の中で「ありがとう」を繰り返していた。 まさに日没間際、凄い景色を見せてくれた 2本のフィルムを数分で使い切ったところで、ようやく落ち着いてきた。思い出してカッパを脱ぐ。下は制服、野宿Tシャツである。セルフタイマーで何枚か写真を撮った。うおお、さ、寒い。カッパを着て、腰を下ろした。煙草に火を点ける。陽は沈んだが、辺りの峰々が見渡せた。甲斐駒、北岳、間ノ岳、鳳凰三山。八ヶ岳に中央アルプス。その向こうは白山か。南に延びている縦走路の先は塩見岳や聖岳であろう。涙の跡が凍って冷たかったが、気にせずにその与えてくれた絶景を目に焼き付け続けた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年03月08日 10時00分20秒
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