11月の読書は11冊になった
山田風太郎『戦中派焼け跡日記』は12月に入って、もう少しで読了する
小説ではない、個人的ドキュメンタリー日記がなかなか興深くてやめられない
というか、知らなくて知らなくてごめんなさいと思いながら読む
昭和21年(1946年)風太郎氏24歳、東京は三軒茶屋に下宿しての医学生
配給も滞り、闇物資は高騰し、ものすごい食糧難
その描写がなまなましい、青春まっただ中なのに
日記には毎日、毎日どのように食物を手に入れただか、が克明だ
例えば
十月八日
「...バラックの食物屋を覗いて歩く。茄子十円求む、十二、三個。」
十月十一日
「...新宿にて南瓜一貫目と少々、十八円にて買いて帰る。
米も粉も麦も芋も尽きたり、今夕より南瓜を煮て飢えをしのがんとす。
ヘルマン・ヘッセ『秋の徒歩旅行』読。」
空腹を抱えているのに、医学勉学に励みながら映画もよく見に行くし
停電もありながら、毎日のようにたくさんの本を読書する青年の風太郎なのだ
その頃とは、わたしが4歳の時にあたる
わたしの親たちは大変だったのだろうが
もう生まれながらに食への関心がなくて、苦痛の経験がないから
「そうだったのか!」と身に染みて追体験しているように思う
それなのに、それだからこそか
食物の苦労話の間に挟み込まれた、思索や青春の悩みが
さながらひかり輝いているような風である
雨や風、日の光、蒼穹
ちょっとした路傍の忘れがたき風景の描写もすばらしい
なるほど将来の物語作家の下地ありありなので...
カバーの絵がキュートなジェームス・M・ケインの小説
有名なベストセラー『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を初読
なるほど生きのいい面白さ!
ところがケインの幻の遺作というので一緒に購入した
『カクテル・ウエイトレス』がなんとも面白い
子持ちのうら若き未亡人が初老の富豪に見初められて
おさだまり、貧乏なハンサム青年にも心惹かれ
さてどうすのるか?
っていう通俗が、あら、あら、あーらら
なまなかな女ではないのよね、でも、最後が...