エリザベートは3ヶ月ぶりにウィーンへ帰ってきた。
「皇妃様、お帰りなさいませ。」
「しばらくね。さぁ、アフロディーテ、行きましょう。」
エリザベートはそう言ってアフロディーテの手を引いた。
「はい、おかあちゃま。」
アフロディーテはエリザベートに微笑んだ。
―可愛らしいわね、アフロディーテ様は・・
―まるで天使みたいな笑顔だわ・・
―それに、あの歌声・・
女官達はアフロディーテを見ながらそう囁き合った。
「お帰り、シシィ。」
「ただいまフランツ。アフロディーテね、またひとつ歌を覚えたのよ。」
「そうかそうか。」
目を細めながらフランツはアフロディーテの髪を梳いた。
ルドルフはじっとエリザベートの膝の上に座るアフロディーテを見ていた。
両親の愛情を一身に受けた自分と同じ顔をした兄弟。
その存在が、憎かった。
「ルドルフ、どうしたの?」
「・・なんでもない。」
ルドルフはそう言って両親に背を向けて、私室へと駆けていった。
「一体どうしたのかしら、あの子?」
「さぁ・・それよりもアフロディーテ、覚えた歌を歌ってくれ。」
「はい、おとうちゃま。」
アフロディーテは天使のような澄んだ歌声を部屋に響かせた。
「よく覚えたね。」
フランツはアフロディーテの頭を撫でた。
両親の愛情に包まれず育ったルドルフと、両親から溢れ出そうなほどの愛情を受けて育ったアフロディーテ。
同じ顔をしているのに、愛情を受けずに育った兄と、愛情を受けて育った弟。
2人はやがて、1人の少年と出会う。
あとがき
子どもルド様とアフロディーテ。
同じ兄弟なのに、両親から愛情を受けずに育ったルド様と、両親から愛情を受けて育ったアフロディーテ。
次回はユリウスを出す予定です。
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