敵の手に落ちた女達は皆凌辱された挙句に殺され、子ども達は親の目の前で殺される。
敵から辱めを受けるよりも、自ら死を選ぶ方が、女達にとって最善の策だった。
「ではユリノ様、わたくし達は先に参ります。」
ユリノことシンの元に、侍女達がそう言ってシンに頭を下げた。
「来世で逢いましょう。」
部屋を出てゆく侍女達の背中を、シンは静かに見送った。
「お母様、こわいよ。」
セトナはシンのドレスを小さな手で摘みながら、恐怖に顔をひきつらせていた。
「大丈夫よ、お母様がついてますからね。」
“あの力”を使えば、子ども達を守れるかもしれない。
だが、それを使えば自我を失うことは解っている。
(俺は、ここにいる人達を多くでも助けたい。)
シンは机の引き出しから、小瓶を取り出した。
中には、“あの力”を覚醒めさせる液体が入っている。
シンは深呼吸すると、その液体を一気に飲み干した。
その時、廊下から軍靴の音と女達の悲鳴が聞こえた。
「女達を生け捕りにしろ! 男と違って利用価値があるからな。」
兵士がそう言って笑いながら、ユリノの部屋の扉を乱暴に蹴破った。
「セトナ、ここに隠れていなさい。」
「そんな、お母様・・」
「お母様があなたを絶対に守るから、安心なさい。」
セトナを衣装部屋に入れたシンは、ゆっくりと背後を振り返った。
「お前が、皇女ユリノか?」
「ええ。」
「俺達と共に来い。悪いようにはしないから、安心しろ。」
兵士がそう言ってユリノの肩に手を置こうとすると、その手は血飛沫をあげて床に転がった。
「うわぁぁ!」
「汚い手で、わたしに触らないで。」
シンはじろりと兵士達をにらむと、血がついた長剣を振り払った。
「相手は女1人だ、やってしまえ!」
兵士達はシンに突進したが、彼らはシンが振う剣の犠牲となった。
シンは肩で息をしながら、返り血で汚れ重くなったドレスの裾を切り裂くと、長い金髪をなびかせながら部屋を出ていった。
兵士達は攻撃する間もなく、シンに倒された。
「宮殿内の軍が、全て滅ぼされただと?」
「はい・・それが、金髪をなびかせた阿修羅がいると。」
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