『何をしたかって・・男と女の関係なんざ解るだろ。』
土方はロシア語でそう言うと、あるで馬鹿にしたかのような笑みをアンドレイに浮かべた。
『貴様、何てことを・・』
『ここの家の主は俺だ、出ていって貰おうか?』
土方はアンドレイを睨み付けると、彼は拳銃を土方に突き付けた。
『アンドレイ君、やめなさい!』
伊東が慌ててアンドレイと土方との間に割って入ると、アンドレイから拳銃を取りあげた。
『離してください、イトウさん! こいつは妹の純潔を奪ったんだ!』
「済まないが土方君、これで失礼するよ。」
アンドレイを引き摺りながら、伊東は土方邸を出た。
「大丈夫か、千尋?」
「ええ・・」
土方は寝室に入ると、そっと千尋を抱き締めた。
「本当なのですか、あの人が・・わたくしのお兄様?」
「千尋、お前ロシア語が解るのか?」
「少しは。あの旦那様・・わたくしはこれから・・」
「大丈夫だ、俺がお前ぇを守ってやる。」
土方は千尋を抱き締めながら、そっと彼女の髪を撫でた。
「着替えろ、風邪ひくぞ。」
「はい・・」
千尋が着替えを終え、総美の寝室へと向かうと、中から咳き込む声が聞こえた。
「奥様、失礼致します。朝食をお持ちいたしました。」
「ありがとう。」
寝室に入ると、寝台で総美は咳き込みながら千尋を見た。
「そんなにお酷いのですか? 一度病院で診て貰った方が・・」
「いいの、すぐに治るから。それよりも千尋さん、わたしにもしもの事があったら、土方と総司を宜しくね。」
「そんな縁起の悪い事をおっしゃらないでください、奥様。」
千尋は総美が冗談を言っているのかと思ったが、彼女の目は真剣そのものだった。
「あなたしか頼めないのよ、こんなこと。お願い、土方と総司を守って。」
「解りました、奥様。」
「ありがとう、千尋さん。」
そう言った時、総美が浮かべた優しい笑顔が、千尋は何故か忘れられなかった。
その後友人も出来て学校にも慣れて充実な毎日を送っていた千尋であったが、総美の体調が快復しないことが唯一の気がかりだった。
そんな中、千尋は李鈴達に呼び出され、神社へと向かった。
「あの、ここで何か・・」
「今度、お祭りがあってね。巫女さんが足りないみたいだから、わたくし達が手伝おうと思って。千尋さんも手伝って下さらないかしら?」
「ええ、良いですけれど・・」
ひょんなことから、千尋は神社の祭りを手伝う事になってしまった。
「そうか、お前が巫女になるのか。そりゃぁ楽しみだな。」
「まさか、いらっしゃるんですか?」
「行くに決まってるだろう。お前の巫女姿、綺麗だろうな。」
来て欲しくないと千尋は思っているのだが、土方は彼女の巫女姿を見に行く気満々であった。
あっという間に週末が過ぎ、千尋は李鈴達に連れられて神社へと向かい、そこで巫女装束に着替えた。
「千尋さん、似合っているわ。」
胸元に赤い紐を結んだ白い着物に緋袴姿の千尋は、天女のような神々しい美しさを醸し出していた。
「神楽舞の練習はちゃんとしたわよね?」
「ええ。」
「じゃぁ行きましょうか!」
李鈴に手をひかれ、千尋は祭殿へと上がった。
土方が神社へと向かうと、祭殿の方には人だかりが出来ていた。
(何だ・・)
祭殿に4人の巫女が姿を現し、雅楽の音とともに神楽舞を舞い始めた。
千尋に巫女装束を着せてみました。
女学生姿もさせてるし・・何だかコスプレが多いような(苦笑)
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