バルカン同盟を名乗る男達がオペラ座を占拠してから数時間が経った。
「奴らの目的は一体何なんだ?」
「さぁ・・それよりもこのままの状態が続くと、膠着状態になるのは目に見えています。」
千尋はそう言うと、男達を見た。
男達は拳銃やサーベル、銃剣を腰に帯びており、その目は滾っていた。
一体彼らは何がしたいのか―それを聞きだす為に、千尋はゆっくりと主犯格と思しき男の方へと歩き出した。
「もし、そこのあなた。」
「なんだ?」
突然千尋に話しかけられた主犯格の男は、そう言って千尋を見た。
「こんな物騒なものを腰に提げて、一体何をなさるおつもりなのですか?」
「別に。皇帝陛下にサラエボをこれ以上血で汚すなと言いたいだけさ。」
「そうですか・・」
千尋はわざと胸の谷間を男に見せつけるようにして、彼にしなだれかかった。
「そ、そんなに俺の話が聞きたいのか?」
「ええ。時間はまだたっぷりとあるんですから。」
男はちらちらと千尋の豊満な胸を見ながら、鼻の下を伸ばした。
「まぁ、俺達は金さえ貰えればいいんだよ。」
「そうですか。ではあなた達はここで死んでいただけますか?」
「はぁ、何言って・・」
男がそう言って笑った時、歳三が彼の後頭部を銃剣の銃床で殴った。
「こういうこった。それにしても千尋、迫真の演技だったよ。」
「ありがとうございます。」
歳三はそう言うと、千尋に笑った。
「さてと、やるか!」
「はい!」
サーベルを男から奪った千尋は、歳三とともに男達を睨みつけた。
「なんだ、てめぇら!」
「それはこっちの台詞だ。てめぇら金欲しさに人様に迷惑掛けてんじゃねぇぞ。俺がてめぇらの性根を叩き直してやらぁ!」
歳三はそう言うと、銃剣を握り締めた。
「相手は2人だ、やれ!」
男達は唸り声を上げながら、一斉に歳三達の方へと突進していった。
歳三と千尋は、男達を斬り伏せた。
「ふん、他愛もない。」
「ええ。武器を持っていても扱い方を知らなければただの宝の持ち腐れですね。」
千尋は笑うと、歳三の背後に回り込んできた敵の額をサーベルで貫いた。
「この野郎!」
「殺れ、殺っちまえ!」
完全にいきり立った男達は、ルドルフが打った電報によって軍隊がオペラ座に向かっていることなど知らず、歳三と千尋にひたすら突進していった。
シャンデリアの輝きを受けながら、2人は向かってくる敵を斬り結び、返り血を浴びながら剣舞を舞うように優雅で鮮やかな動きをしながら剣を振るっていた。
「思いの外、早く片付いたな。」
「ええ。ドレスは汚れてしまいましたけど。」
「ずらかるか。」
歳三と千尋が腕を組み、オペラ座へと出て行こうとした時、軍隊がオペラ座へと入って来た。
「お前ら、そこで何をしている!?」
オペラ座に突入してきた軍隊が、2人に銃口を向けた。
「何って・・害虫駆除ですよ。いけませんか?」
千尋はそう言うと、彼らはジロリと千尋を睨みつけた。
「ふん、信用ならんな。身柄を拘束して・・」
「待て。」
ルドルフが姿を現すと、軍隊の指揮官と思しき男が慌てて彼に敬礼した。
「その者は我々の敵ではない。」
「こ、皇太子様・・」
ルドルフの言葉に、彼らはすごすごと千尋達から退いていった。
(やはり・・この方はルドルフ皇太子様。)
「君達に少し聞きたい事がある。付き合って貰えるか?」
「俺達に一体何の用だ?」
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