「じゃぁ、行ってきま~す!」
翌朝、千歳は元気よく手を振ると、学校へと向かって歩いていった。
「ちーちゃん、おはよう!」
「亜美ちゃんおはよう!」
いつもの通学路で、千歳は亜美に手を振った。
「楽しみだねぇ、遠足!」
「うん!」
教室に行くと、皆それぞれ目を輝かせながら遠足の話をしていた。
「おはよう、ちーちゃん、亜美!」
「おはよう、望美ちゃん。」
「今日晴れてて良かったねぇ。」
「うん。お菓子何持って来た?」
「色々持ってきたよ。後でみんなと分け合いっこしよう!」
「うん!」
「みんなぁ~、校門に集まって!」
「はぁ~い!」
千歳達は金田とともに校門へと集まった。
「ねぇ、あいつどうしたんだろうね?」
「さぁ・・」
千歳が周囲を見渡し、友哉の姿を探したが、彼は何処にも居なかった。
(あの子、来ないのかなぁ・・)
「どうしたの、ちーちゃん。バスに乗り遅れるよ?」
「ごめんごめん、すぐ行く!」
リュックサックを揺らしながら千歳がバスに乗り込もうとした時、校門の陰から友哉がじっと自分を睨みつけていた。
その視線に恐怖を感じ、千歳は慌ててバスへと乗り込んだ。
「みんな、今日は楽しい一日を過ごしましょうね!」
「はぁ~い!」
バスに揺られながら千歳達がやって来たのは、森林公園だった。
「空気が美味しいねぇ。」
「うん、晴れてて良かったね。」
森林浴をしながら、千歳達はおしゃべりをしながら遊歩道を歩いた。
「じゃ~ん!」
「うわぁ、美味しそう!」
千歳がお弁当箱を開けて千尋が作ってくれたクラブハウスサンドイッチを見た亜美と望美が歓声を上げた。
「望美ちゃんの卵焼きも美味しそうだね。」
「そうでしょう? さ、食べよ!」
「うん!」
3人は弁当や菓子を分け合いながら、楽しく食事をした。
「ねぇちーちゃん、夏休みのキャンプ参加するよね?」
「勿論! 望美ちゃんは?」
「あ~、うち塾の夏期講習あるから無理。キャンプ行きたいのに・・」
望美はそう言って顔を曇らせると、溜息を吐いた。
「望美ちゃん、お受験するから大変だよね。」
「うち、本当はしたくないのにさぁ、ママが煩いんだもん。お兄ちゃんがあんな風になってからは、ずっと“公立よりも私立の方が良いのよ。だから頑張って私立に行きなさい。”って言うんだもん。」
母親の口真似をしながら、望美は溜息を吐いた。
「それにしてもあいつ、来なかったよね。」
「やっぱり一人だと寂しいんじゃない?」
「やめようよ、あいつの話は。楽しい遠足なのに。」
「そうだね。」
この日千歳は、友哉の事など忘れて亜美達と遠足を楽しんだ。
その数日後に、ある事件が起きた。
「あれ、うちの給食袋がない!」
体育の時間が終わった後、そう言って望美がランドセルの中をひっくり返した。
「本当にないの? ちゃんと確かめた?」
「確かめたよ、何度も。もしかして家に置き忘れてたりして。」
「そうかもしれないじゃん。ママに電話してみたら?」
望美が早苗に連絡すると、彼女はちゃんとランドセルの中に給食袋を入れたと言っていた。
「先生に相談しよう!」
千歳達は職員室へと向かった。
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