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カテゴリ:陰謀論批判
そもそも、どうにでも解釈できる、あやふやな 「事実」から一足飛びに 「結論」 を導き出すという点では、このような 「陰謀論」 は、同じようにあやふやで雑多な 「事実」 をかき集めて「超古代文明」 とやらの存在を主張する、かのグラハム・ハンコックの 「トンデモ歴史学」 とよく似ている。 あやふやな 「事実」をいくら集めたところで、そこから浮かび上がってくると主張される 「結論」 など、しょせん 「砂上の楼閣」にすぎない。あやふやな事実でも、大量に集めれば互いに補強しあうことで 「真実味」が増すかのように思わせるのは、本人たちも自覚していないのだろうが、ただの論理的詐術である。ハンコックの本などは、ただの面白いお話にすぎないから、別に害はないだろうが、「陰謀論」 はそうではない。 どうやら、ツインタワーの近くに建っていたビルの崩壊を、レポーターが中継で実際より20分ほど早く伝えたということが、「陰謀」 の証拠なのらしい。なんで、そんなことがおきたのかというと、それは、そのレポーターは事前にそうなることを知っていたのか、事前にそう言うようにどこかから指示されていたからなのだそうだ。 こんな馬鹿を言いふらしている人たちは、自分があの現場に居合わせたら、どんな気持ちになるかすら想像できないらしい。あのような前代未聞の大混乱の 「現場」 の中で、事前に手渡された 「でっち上げメモ」 だとかを伝えることができるような、なんの感情も持たない冷徹・非情な人間が、実際にこの世に存在するとでも思っているのだろうか。 現場にいたレポーターが、興奮のあまり、ビルの名前を間違えたとか、言いまわしを間違えたなどと考えるのが、常識というものだろう。それとも、レポーターというものは、どんな場合にも、言い間違いなどせずに、冷静かつ客観的に 「事実」 を伝えうると信じているのだろうか。あほらしくて、つきあいきれない。 こんな馬鹿話を簡単に信じ込むことができる人間は、結局は、どんな馬鹿げた話だって信じ込むようになる。「アポロ陰謀論」 だろうと 「9.11陰謀論」 だろうと、あるいは 「ユダヤ陰謀論」 だろうと 「バチカン陰謀論」 だろうと、そこに違いなどありはしない。ホロコーストに道を開いた 「ユダヤ陰謀論」 者らだって、自分たちは、世界を裏で支配している 「巨大な悪」 と戦っている 「正義の人」 のつもりでいたのだ。 世の中の 「悪いこと」 は、すべて 「悪い人」 らのせいで起きているのだと信じていいのは、「ヒーロー物」 の主人公に憧れる小学生までである。いい年をして、そんなことを信じられるのは、よほどの世間知らずか、いつまでたっても大人になりきれないただの未熟者だ。 「9.11陰謀論」 と 「ユダヤ陰謀論」 とは別の話だなどという言い訳は通用しない。根っことなる発想が同じなのであり、彼らだって、自分たちは確かな 「証拠」 を握っていると信じこんでいたのだから。現に、すでにあちこちで結びつき始めているではないか。 「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」 という川柳もあるが、「陰謀論」 に取り付かれた人にとっては、そのような些細な 「言い間違い」 や、単なる偶然の一致なども、すべて 「陰謀」 の証拠になるのだろう。なにごとも、いったん迷路に入り込んだら、すべてがその結論にあうように、解釈されてしまうものである。 こういう 「妄想」 の当否は、饅頭の味のように食べてみればすぐ分かる、というものではないだけに、まったく始末におえない。理屈などというものは、いくらでもつけられるものだ。なにしろ、人間の頭というのは、そういうふうにできているのだから。 歴史を振り返れば、かのスターリン大元帥も、あちらこちらに 「陰謀」 の影を見つける大名人であった。その結果、多数の罪もないかつての同志や一般の市民が処刑され、あるいは、シベリアに送られることになった。ありもしない 「陰謀」 のにおいを、どこにでもかぎつける心性というのは、そういうものなのだ。 そういう心性の本質とくだらなさ、危険性は、いま現に 「権力」 を握っているのか、それとも 「権力」 や 「体制」 に対して、「批判的立場」 なるものをとっているつもりなのか、なんてことには、まったく関係ない。 くだらぬ 「陰謀論」 などに、すぐにかぶれるような人間が、いったん権力を握ったらなにをやるか。それこそ、スターリンがいい手本である。 むろん、そんな心配は無用ではあろうが、まったくもって、歴史の教訓ぐらいは、ちゃんと学ぶべきだろう。 ヒトラーが合法的に権力を握ることができたのも、荒唐無稽な 「ユダヤ陰謀論」 などにいかれた、多数の 「善良」 で 「素朴」 な、自分は正しいと信じこんでいた市民のおかげなのである。 「地獄への道は善意で敷き詰められている」 という有名な言葉は、こういうときのためにある。マルクスが言ったように、「無知がものの役に立ったためしなどない!」 のだから。
「陰謀論」 の話はこれでおしまいにします。 それにしても 「無知の知」 という名言を残したソクラテスの時代から、 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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こんばんは。
>あやふやな 「事実」をいくら集めたところで、そこから浮かび上がってくると 主張される 「結論」 など、しょせん 「砂上の楼閣」にすぎない >「陰謀論」 はそうではない。・・物証も証言もなしに、あやふやな 「状況証拠」 とやらで 「犯人」 を名指しして、「冤罪」 を作り出す論理とも同じ いつやったか、お豆[ROLLING BEAN]さんに ベンヤミンの『歴史テーゼ』のことでコメントしました。 『進歩という暴風に逆らい、瓦礫から歴史を紡ぐ 天使』の絵に触発されて描かれた遺稿の一節について。 確かに瓦礫から価値あるものを拾い集めて、 歴然?たる論を建てるのは、総合力が要りますので、超 難しいですね。でも『孟母の裁断』の教えのように、 『絶ち切らず』に粘り強く編み(織り)続けなアカン。 PS お豆[ROLLING BEAN]さんとこで時々見かける ゴルゴ十三さんって面白い書評される人みたい。 http://www.amazon.co.jp/gp/pdp/profile/A3V99LO4N7GEW7/ref=cm_rp_lm_list_profile あ、それと1つ不思議に思っているんですけど、 野田正彰さんって京都学派嫌いでしょ? まあユングが19世紀的やからかなあ~とも思ってるんですけど、 吉本隆明さんらはその辺のこと、何か書いておられません? 詩人の方は、かなり疎いんで・・。 (2007.12.17 18:50:32)
三介さん
どうもどうも いささか腹が立ったもので、荒れた記事を書いてしまいました。巷間、「9.11陰謀説」なるものが存在していることぐらいは知っていましたが、これほど広がっているとは思いませんでした。 あちこちリンクをたどっていくと、ぼろぼろ出てきましたよ。情けなくて、屁も出ません。 これでは、なんでもかんでも「左翼の陰謀」とか「朝日の陰謀」などと言っている連中と同じレベルです。 結局「人間」とか「社会」とかについての、本質的な理解と想像力があまりに貧困なのですね。「常識力」といってもいいですが。 「物理的事実」とは違って「社会的事実」というものはもともとあやふやなものなので、だからこそ木ばっかり見てないで森を見て絵を描くだけの強靭な思考力が必要なのです。 野田正彰については宮崎哲弥ともめたってことぐらいしか知りません。 京都学派ですか。亡くなった広松は西田哲学や「近代の超克」論にも関心が高かったみたいですね。 吉本さんは京都学派というより、戦争に屈服するまでの初期の小林秀雄の影響を強く受けた人だと思います。 (2007.12.17 21:42:56)
玄人はではない事をまず考える、素人はできる事をまず考える、先進国のムリと思われた井戸掘りの話でした。時に知識は限界を作ってしまうのかもしれない。
(2007.12.18 00:04:20)
川風そよこさん
>玄人はではない事をまず考える、素人はできる事をまず考える、先進国のムリと思われた井戸掘りの話でした。時に知識は限界を作ってしまうのかもしれない。 ----- そうですね、「専門性」ばかり発達して、応用の利かない人もいますね。 しかし、一番始末に困るのは、自分は「玄人」だと思い込んでいる「素人」という中途半端な人たちです。 結局は、やっぱり「常識力」と思考や発想の柔軟性でしょう。 素人のよいところというのは、まさにそのような柔軟性ですね。 (2007.12.18 00:12:29)
かつさん、こちらでははじめまして。多文化・多民族・多国籍社会で「人として」の仲@ukiukiです。
これまであまり真剣には考えてこなかったのですが、陰謀論がトンデモや疑似科学とつながっていること、そしてポピュリズムとも強い親和性があること、そのあたりをここ数日しみじみと実感させられてしまい、さらにそこへこの「追加」記事を読んで、そのもたらす結果の恐ろしさにあらためて目眩を覚えてます。 拙ブログでも何か追加記事を書くべきだろうと思いつつ、しかしすべてが空回りしそうな気が激しくして、ためらっちゃってるここ数日です。このもやもやした気分、年内にすっきりするかなあ……。 書けたらTBをお送りしますね 。 今後ともよろしくお願いいたします。 (2007.12.18 12:42:35)
仲@ukiukiさん
どうもです。 実際問題としては、このような「陰謀論」がホロコーストにつながるといったような重大な政治的・社会的結末を招くとまでは思っていません。 むしろ、その点では普通の市民の皆さんのほうが、はるかに常識的なのだろうと思います。 普通の生活者である人たちよりも、自分は「意識」が高いと思っている人ほど、こういう「トンデモ論」に引っかかりやすいというのは、なんというか非常に悲しくまた滑稽なことという気がします。 (2007.12.18 13:10:00)
意味不明。駄文の域を出ないと思う。
(2007.12.18 13:42:56)
UFOや水素融合地震が・・。
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10060786251.html#c10083710532 ああ、少しめまいが、確かに・・。仕事して欲しい・・。 以前、英か仏かで、UFOのこと、政府が公式に報告(今のところ確認出来ずと)してましたけど・・。ご愛嬌? あ、ところで、『ゲド(戦記)を読む』っていうミニ冊子W・ディズニーの(岩波とSジブリ)[糸井重里プロヂュース]出だしてますね。映画・本の広告・無償品で。中沢新一氏の丁寧な解説、分かり易かったです。『文革』等への突っ込みは弱かったですが、人類学やマギア(古代)に対する80年代以降の関心の深まりを上手く解説されていると思いました。男性的秘密結社(高度専門化・秘教化)と女性的日常のやりくり・(柳宗悦の民芸にも通じる?)手芸・井戸端会議との対比で、後者が安定社会を保障している、っていう風に読めました。IAEAより遥かに健全ですね。 (2007.12.18 23:51:07)
三介さん
そういや、地震兵器による攻撃を警告している人もいるそうですね。 まるで、オウムのような話です。 世の中、妄想の花盛りのようですね。 なにしろ、「水伝」の話を信じていて生徒に教える小学校教師もいるそうですから。 こうなりゃ、なんでもありですよ。 (2007.12.19 00:01:49) |