カテゴリ:虫歯の電気化学説
60代女性、左上7、遠心歯根面カリエス、自発痛-。
同じ歯では近心(手前側)より遠心(奥の方)が虫歯になり易いことは知られているが、 現在の歯科医学では説明のできない現象であり、 単に歯磨きが難しいからでは?と何気なくスルーしている。 どちらも磨けていませんよ。 前回も書きましたが、「虫歯の電気化学説」によると、 遠心の方が口の中の奥の方なので、それだけ酸素濃度が低く、酸素濃淡電池と呼ばれる局部電池を形成する。 なぜなら歯はハイドロキシアパタイトという「(水素)イオン電導性セラミックス」に分類される素材なので、 歯牙表面で遠心が陰極(アノード)、近心が陽極(カソード)という電極になり、局部電池を形成する。 そして陰極(アノード)が電気化学的に溶解する。 つまり電気化学的腐食。 これが虫歯ということだ。 もちろん電池は、酸性溶液中ではその起電力を増すので、電食は進行しやすい。 虫歯は電食の一種と考えると、その対策はいろいろと考えられる。 アルカリ性にするというのが一番有効だろう。歯の電導性の元になっている水素イオンはアルカリ性では中和反応により水になって消える。 しかもハイドロキシアパタイトはアルカリ性で再結晶する。 ダブル効果だ。 臨床経験上もっとも効果が高い。 虫歯の予防にフッ素というのは言われている程には効果はない。 少なくともフッ素はなくても虫歯にはならない。 出来てしまった虫歯には無効とされているフッ素だが、 重曹でアルカリ性にすると出来てしまった虫歯も治る。 わざわざフッ素のような毒性のある物質をたかが虫歯予防に多用する臨床的意義があるとは思えないと言うのが、本音だ。 虫歯の電気化学説によるとフッ素の虫歯予防効果を説明できないことはないが、 実験的には今のところ検証されていない。 一般的にはフッ素を歯に塗布すると、ハイドロキシアパタイト中の水酸基がフッ素に置換され、フルオロアパタイトになり、 これが歯牙の硬度を増すとされている。 硬度が増すと酸に強くなるのか?という新たな疑念が湧くのだが、この点は見事にスルーされている。 硬いのと酸に強いのは別の話だろうと思うのだが? 虫歯の電気化学説によれば、フルオロアパタイトが虫歯の進行を阻害するということを説明できないことはない。 それは、イオン伝導(水素イオン)の荷体となる水酸基がないのだから、 イオン伝導は阻害されて、虫歯になり難い歯となると考えられるということだ。 しかし、フルオロアパタイトに関しては電気化学的な視点でのアプローチは全くされておらず、 歯牙表面の硬度を増す、(だから?)酸に対する耐性が増すとされるだけで、詳細は不明のままだ。 ・・遠心の虫歯の処置は通常困難を極めるが、希に一人ミラーテクニックを使うことができる場合がある。 それが上の画像だ。 左手でデンタルミラーと吸引チップを握り、ミラーに写った像を見ながら右手で切削器具を使う。 この画像では右手で写真を撮ったので、切削器具は患者さんに持ってもらったw 虫歯を除去した後、 覆髄はせず、CR充填した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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