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Okum

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Apr 25, 2009
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カテゴリ:Movie
遅ればせながらDVDで見ました。すごかった。何がすごかったって、ライティング。ここまでライティングが計算し尽くされた映画はいまだかつてないのではないか、とすら言いたくなる(知らないけど)。

ホラーにおいては暗闇の中での光が「こわい」という効果を呼ぶために使われるわけだけど、ここでは、昼間/夕方の陽光、あるいは居間における照明が同じ効果をあげている。暗闇の中ではなく明るい中での光なのに、不気味に「こわい」。というか、明るいのにこわいので、不気味度はより高い。黒沢氏のほかの映画は数えるほどしか見てないので、この作品に特有なのかどうかはわからないんだけど。

特にすごいと思ったのは、香川さんが面接に行った会社のオフィス。西日が差しているのだが、そのオレンジの光が面接担当者(ベンチャー企業の若き社長か?)の顔に揺らめきながら被さる。西日ゆえに正面から水平にのびてくる光、その角度による影の効果がすごい(歌うことを強要された香川さんが歌い出した瞬間に切り替わる次のシーンで燃えている炎の光もすごい)。

あとは、香川さんの家の居間で、次男と言い合いしてしてるところ(だった気がする)。この家の横にはすぐ線路があってときどき電車が通るのだが、そのヘッドライトが点滅し、窓を透して部屋に侵入してくる。同様の窓の向こうの点滅が、とはいえ黄色ではなく赤なのだが、パトカーのサイレンによって発せられる場面もある。

そして、またまた香川さんの家の居間で、長男がアメリカ軍に入隊したい(すごい設定)ということで言い合いになっている場面。丸くて白い蛍光灯が3つ三角につながった照明が、めちゃくちゃ白くて明るい。それが香川さんの頭スレスレにある。その恐るべき白さ。

あとは、ライティングというよりアングルなんだけど、ホラーなところが(少々狙ってる感が漂うとはいえ)いくつかありましたね。黒須さんの家で、斜めの階段によって顔の大部分を遮断されながらこちらを見つめる娘さん。そして、いつもながら人体のモノ感が強調された演出(次男の階段からの落ち方、キョンキョンの夢からの覚め方、など)、通常の物語的内面から完全に断絶された発話(ショッピングセンターでキョンキョンとはちあわせたときの香川さんの「あ」、車にひかれて(?)次の日の朝目覚めたときの「あれ」など)なども秀逸。あいかわらずあっけらかんと幽霊も一度出てきましたな。

物語構造は、よくもわるくも村上春樹を思い出した。日常が少しずつ歪んでいって、複数の人間がそれぞれ同時に「井戸の中」のような異世界(夜)に迷い込み、そこを失踪/疾走しながら抜け出て、ふたたび、歪む前よりも明るい日常(朝)に戻るというプロセス。(キョンキョンを、というより映画自体を)「井戸の中」へ引き込むのは、死神のような装束の役所広司。あの唐突な登場、唐突なキャラ、わかりやすすぎる役割は、正直どうかな~とは思うけど、それこそ黒沢さんの真骨頂なんじゃなかろうか。これまでいくつか見た彼の映画でも、同じように、ちょっとクサすぎる&隠喩がわかりやすすぎる展開やセリフも多かったし。それは、「映画性」を引き受けるための意識的な行為なんだろうし。

ベストキャスティングは、アンジャッシュの児島さん。互いに無視しようという宣言、いじめられているという現実の受け止め方の軽さ、こわすぎる。といいつつ、やっぱり一番こわかったのは、キョンキョン(「つぶれちゃえ、そんな権威」「だれか私をひっぱって」など)かも。






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Last updated  Apr 25, 2009 09:54:41 PM
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