明石中宮 -5-
そんなある日、明石入道から便りがとどきました。「承るところによると、明石女御は春宮に参内なさって、この度は男宮がお生まれになったとのこと。深くお喜び申し上げる」と御祝いを述べ、明石の上が生まれる前に見た夢の話が書いてあるのでした。 『私は何やら不思議な夢を見てから、密かに多くの願を立てていましたが、その願いが今やあなたの身に叶いました。若君がお生まれになり、女御が国母となられた時には、住吉の御社をはじめ宮・寺にもお礼参りをなさいまし。私の言うことは正夢だったのですから、疑うことはありませんよ』「この月の十四日になん、草の庵まかり離れて、深き山に入り侍りぬる。かひなき身をば、熊・狼にも施し侍りなん」とあります。 住吉祈願の願文などは大きな沈香の文箱に入れられて、明石の上に届けられました。