テーマ:ワイン大好き!(30246)
カテゴリ:ワインコラム
さて、ここまで、「コルクを通じて流入してくる酸素=悪」という論調で書いてきました。そもそもこの点についてはどうなんでしょうか? 私が今回参加した「脱酸素剤パックワイン」の検証では、パックに穴が開くかシールがはがれない限り、酸素はほぼ完全に遮断されています。 天然コルクのように継続的な微量の酸素の供給がない環境下で、はたしてワインは健全な熟成をするのだろうか。 実は今回の検証で私自身がもっとも懸念していたのもこの点だったのです。 その前に関連資料から…。 またしても、きた産業さんのPDFファイルから引用しますと、 3-6 年程度、あるいはそれ以上の長期びん内熟成タイプのワインの場合に限った一般論ですが、0.2-0.3ミリグラムO2/ 月のあたりがカベルネ S. やメルロなどに、0.05-0.15mgO2/ 月のあたりがシャルドネやリースリングなどに、それ以下の酸素透過度(スクリューキャップのレンジ)はピノグリやソービニオン B. などに、それぞれ最適ではないか、という意見もあります。 また、下記のような記述もあります。 香りには原因物質があります。かならずしも 1 対 1 対応ではないでしょうが、「パッションフルーツ、グレープフルーツ」の香りはメルカプタン由来、「柑橘系、リンゴ」の香りはテルペン化合物由来、などです。筆者はこの分野を化学的に述べるだけの知見を持っていませんが、一般論としてメルカプタンは酸素を嫌い、テルペン化合物はわずかの酸素がある方が香りが引き立つといわれます。最近よく話題になる甲州種ブドウの香りの原因物質に、「3- メルカプトヘキサノール」と「ベータダマセノン」があります。前者は酸素を嫌いますが、後者は酸素がないと香りが引き出されないということです。 「白ワインにはスクリューキャップ」、という認識をもたれている方も多いでしょうが、酸素透過をおさえることが必ずしもすべての白ワインに良くないことがわかります。 (中略) 一方、赤ワインは、醸造工程でマイクロオキシジェネーションをすることがあったり、開栓後にデキャンティングで酸素に触れさせる場合があったりすることからもわかるように、一般的に酸素を好む場合が多いといえます。代表的な赤の香りである「バニラ、オーク、ナッツ」の原因物質、フェノール系化合物は酸素を好みます。醸造工程最後で酸素供給量をコントロールして充填時に条件だしをすればスクリューキャップでいい、といえるのかもしれませんが、合成コルクは天然コルクと同じく経時変化的にわずかづつ酸素を通すので、「壜内熟成」というワイン本来のスタイルに向いているといえるでしょう。 ということで、それぞれの品種の香りの成分を引き出す物質があって、それらが好む酸素の量というのがあるようですね。 ところで、私がきた産業さんのサイトとともに大いに参考にさせていただいているサイトがあります。FoodWatchJapanさんの元菊屋大久保商店店主である大久保順朗氏の連載「再考・ワイン物流改善」です。 http://www.foodwatch.jp/author/okubo_yoriaki いや、このコラム集はスゴイです。まさに目からウロコの連続。追々紹介していきますが、私もこれを読んで何度「なるほど、そういうことか!」と膝を打ったことか。このテーマに関連した内容はおおむね#38~41あたりですね。 #38 高温ダメージの正体はビン内酸素流入による酸化 http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12230 #39 ワインの高温劣化は温度そのものによるのではない http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12231 #40 酸化による熟成と劣化を分けるものは何か? http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12232 #41 酸素がどの物質と結び付くかで結果は異なる http://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12233 ただし、氏のコラムの中でも「熟成に継続的な(微量の)酸素供給は全く不要か?」ということについては、下記のように明確な答えは書かれていません。 ここで私は、ワイン業界の常識の一つを疑わざるを得なくなった――「ワインの熟成に極めて緩やかで微量な継続的酸素供給が必要であり、コルク栓はその状況を提供してくれるワイン熟成に不可欠なファクターである!」というあれだ。 このフレーズの「極めて緩やかで微量な継続的酸素供給」の吸引酸素総量と、「吹きこぼれを起こしていなくても劣化しているワイン」が吸引した酸素総量には、どれほどの差があると言うのか? 吸引酸素総量が同じでも、吸引に要した時間の長短だけで「熟成」と「劣化」に分かれてしまうのか? この件に関しては、戸塚先生も明確な回答をお持ちでなかった。 …ということで、3年保存した「脱酸素剤パックワイン」検証のボトルたちの中には還元状態になっているものもあるのではないか、というのが私の参加前の想像でした。 ふぅ。やっと本題に入れます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年11月20日 23時17分05秒
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