第16回東西落語研鑽会
私は何度か、この「東西落語研鑽会」に足を運んでいる。東京にいると、なかなか上方落語を聴くチャンスは無いし、そういう意味では、非常に有難い落語会だと思う。だから毎回毎回プラチナチケットになるんだろうなあ…。しかし、今回のは今まで行った中で、一番凄い会だったと思った。正真正銘の東西オールスターが5人揃ったようなメンバーだもの。それに今回もまた、やたらに有名人を客席で多く見かけた。私の1列後ろの4つ隣は、高田文夫センセイだった。トップバッターは、昨年11月、惜しくも早世した桂吉朝師匠の弟子である吉弥さんで「ふぐ鍋」。米朝一門だけあって、大変聞きやすい声で、端正な感じの高座だった。リズムのよい関西弁は、聴いていてとても心地いいものだ。聴いた事あるような無いような、自分の中では微妙な記憶の噺だったが、面白かった。続いては小朝師匠で「試し酒」。今は亡き柳家小さん師匠の十八番だった噺。全体的な雰囲気で言うと、小さん師匠に、やや古今亭志ん朝師匠のテイストが入った感じだったと思う。人物描写に少々迫力が無かったような気もしたが、ここぞという時に、見事に爆笑をさらっていた。中入り前は、上方の大御所・桂春団治師匠で「お玉牛」。最初「あんまり体調が良くないのかな?」と、一瞬思ったりしたのだが、噺に入ったら全然!あんまり素晴らしいのと面白いので、心底感動してしまった。中入り前の3人、全員素晴らしい高座だった。しかし!中入り後の春風亭昇太師匠の「時そば」。前々から好きな噺家だったが、こんなにこの人が凄まじい力を持っているとは思わなかった。凄かった、とにかく凄かった!!マクラで、見事にズレの無い「現代」を語り、何故かフィギュアスケートを観に行ったという話になり、浅田真央選手のジャンプを高座で立って説明していた(笑)。「そばの話を喋りだすと、ネタに入るって分かるから恥ずかしい」と言って、本題に入ったのだが…。題は「時そば」だが、噺の内容は上方の「時うどん」で、食べ物がそばになっただけ。最初に蕎麦屋をごまかす時に、後で失敗する奴が、だます奴の隣に一緒にいるのが東京との大きな違い。昇太師匠は、登場人物を全員、相当エキセントリックに描きながら「古典落語の世界」を忠実に守っている(余計な事しない)のは流石としか言いようがない。私は何度も「研鑽会」に行ってるが、天井が落ちるんじゃ?と思うほどの大爆笑が何度も起きたのは初めてだった(前の笑いがおさまらないうちに次の爆笑が来るため、全員笑いっぱなし)。最後は場内大喝采。あんなに凄い拍手を落語会で聴いたことはいまだかつて無い。トリは上方落語協会会長の三枝師匠。新作落語の「くもんもん式学習塾」という噺。やくざの事務所が不景気で、学習塾経営に乗り出すという凄い噺(笑)。英語の授業で、和訳が全部「指をつめる」とか「ドタマかち割ったるぞ、ワレ!」になるのが笑った。5人の高座、全員気合入れて聴いてしまったので、すんごい疲れた(苦笑)。