蛙と心臓
今日は心臓の最終日です。ヒトなど哺乳類の心臓は4つの部屋に分かれています。右心房,右心室,左心房,左心室と名付けられています。こういう心臓を二心房二心室といいます。このタイプの特長は、右側の血液と左側の血液が心臓内の隔壁で完全に遮断され、混じり合うことがないということです。つまり、肺で高酸素になった新鮮な血液と、使い終えて浄化されるべき静脈血が混合されません。このことは恒温であることに役立っています。我々は恒温動物といって、外気温に左右されずに必要な体温を保つことができます。しかし、そのためには大量の酸素を燃やして熱を発生させないとなりません。血液の混じらない二心房二心室は、全身の筋肉に効率よく酸素を供給します。また、魚類は、一心房一心室で非常に簡単な作りです。水中で一生を暮らす魚類には肺がありません。エラを利用して酸素交換をしています。全身の静脈血→心臓→エラ→全身と循環します。魚類から進化した両生類は、二心房一心室という一見中途半端な構造をもっています。これでは静脈血と動脈血がまじってしまいます。なぜ、このような形態なのでしょう。それは彼らの一生をみると分かります。カエルを例にとると、卵から生まれた時はオタマジャクシです。この時は水中生活なので、エラで呼吸をしています。次第に足が、そして、手が生える時期になると、体の中でも変化があります。陸で生活するために肺を発生させているのです。肺と手足がしっかり成長したら、いざ陸上ですが、這い上がった瞬間、呼吸法もエラから肺に変えなくてはなりません。その瞬間に、心臓内に隔壁を作る訳にはいかないため、生涯を考えての二心房一心室なのです。この形式ならば、肺と心臓を結ぶ肺循環がないオタマジャクシの時期でも、肺呼吸を始めたカエルの時期でも、フレキシブルに対応できるというわけです。(両生類は粘膜呼吸も兼用するためとの説もあります。)フレキシブルなのは良いのですが、デメリットもあります。心室で静脈血と動脈血が混じるため、体に充分な酸素を供給しにくいのです。そのため両生類には恒温性がないのです。横尾けいすけ