桜島を抱く鹿児島県は,かつて「薩摩国」(さつまのくに」と呼ばれていた。江戸からも京都からも遠く離れたこの南の地は,代々島津家(しまづけ)が統治し,独自の文化と反映を築いてきた。明治維新とその後の近代化を実現させたのは,他でもない旧薩摩藩の志士たちである。
「薩摩藩精強無比の千年史」は,戦国大名を含めれば,千年近い歴史を持つ薩摩藩を徹底特集。圧倒的存在感で日本を動かしてきた,熱き「隼人」たちの真実に迫る!
著者の北康利氏は,『白洲次郎 占領を背負った男』で,敗戦後に占領軍と堂々渡り合った快男児、白洲次郎を広く世に知らしめた評伝作家である。これまでも『<白洲次郎 占領を背負った男 上 (講談社文庫 吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』で吉田茂や松下幸之助らをとりあげている。
『
西郷隆盛命もいらず名もいらず』
では,維新の英雄、西郷隆盛と西郷が生きた時代を振り返り,「明治維新は日本最大の社会イノベーションだが、倒幕自体は手段で、目的は日本の独立を守ることだった」と分析している。
西郷の真の偉大さは、「赦(ゆる)す力」にあるとみる。江戸城の無血開城、山形庄内藩への寛大な処置に代表される戊辰戦争の戦後処理など、大局を見据えて内戦の犠牲を最小限にとどめた西郷の度量が、近代日本の発展にどれだけ寄与したか、計り知れない,とも分析している。
そして, 「西郷最大の功績は倒幕実現でなく、維新後の廃藩置県などの大改革だった」。既得権益層の巨大な反発が予想されたこれら難事業は、西郷の人望の力なくしては、決してなし遂げられなかった,とも論じている。
いま改革が叫ばれる中,「何を守るための変革なのかを再考するには
、西郷の人生を見直すのが一番です」と説いている。