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2013.07.21
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カテゴリ:昭和期・三十年代

  『持ち重りする薔薇の花』丸谷才一(新潮社)

 「持ち重り」という言葉は少しヘンな言葉だなと思っていました。
 割と新しい(とはいえ、私の新しいは1970年代以降、みたいな感じなんですが)言葉かなと何となく思いつつ、ちょっとネットで調べてみると、結構昔からある言葉だと知りました。宮本百合子とか国枝史郎とかの文学作品の用例が載ってありました。

 用例と言えば、思い出したんですが、私はたぶん三島由紀夫が使っていた文章が記憶に残っていたのでありました。
 でも何の作品かはちっとも覚えていなくて、ただこんなニュアンスの文章でした。

 「○○子は十○歳で処女であることに持ち重りを感じていた。」

 こんな感じのフレーズを読んだ私は(私自身がたぶん十○歳であったと思いますが)、もちろん(「もちろん」ってフレーズが適当か否かは考えものですが)童貞で、「そーなんやー」とまー、性的な事柄について未体験な女性が、そのことに対して感じる重みというか気怠さを実にうまく表しているなーという、感心というか私のボケ具合というか、そんな感想を私は持ちその結果、「持ち重り」=「処女の重み」みたいな変な刷り込みをされて現在に至る、と。

 ……うーん、誠に読書とは大切なものでありますなぁ。(なんのこっちゃ)

 というわけで、なんか少し燻ったようなもやもやしたイメージを持ちつつ、私は本書を読んだわけでありますが、もちろん私の勝手な「持ち重り」イメージとは全く無関係でありながらも、このなんか燻ったようなイメージは、この作品読了後も私の中に残ったのでありました。

 筆者丸谷才一氏は去年お亡くなりになりましたが、生前中はわたくしに取りましては、新刊の小説が出る度に気になる作家のお一人でありました。
 とはいえ、長編小説に関しては、十年に一作ずつ出版するというとても寡黙な作家でいらっしゃいました。

 『笹まくら』『たった一人の反乱』『横しぐれ』のあたりが、個人的な好みで言いますととってもよかったですねー。
 『裏声で歌え君が代』もスリリングでしたが、なんといいますか、私としては、このあたりから何となくちょっとずつ違和感が感じられていったのでありますが、今回の小説についても、どーも、その延長線上のものがありました。

 これは何かなと思いながら読んでいたのですが、結局の所考えついたのは、「批判性」についてのイメージの違いでありましょうか。
 
 本書は元経団連会長の一人称の「語り」を中心にしながら、幕間に三人称文章を入れるという構成になっています。一人称部分の客観性はもっぱら三人称部分が担当することになっているのですが、そこも含めて一言で言いますと「威張ることの好きな男達」ばかりの話になっているように感じました。

 もちろん「威張ることの好きな男達」が作品に描かれることが悪いわけではありません。今更私が述べるまでもありませんが、大切なのは、そんな男達(功なり名を遂げた元経団連会長を筆頭に、世界的な人気を誇ると設定されているヴァイオリンカルテットの四人の「芸術家達」も)をどれだけ客観的に描いているかでありましょう。

 三人称部分に描かれる元経団連会長の私生活の不幸さや、彼の一人称部分で一見軽妙に語られる、様々な男女の確執にあたふたとする芸術家達の姿に、それら(批判性・客観性)は読めそうでいて、ふと筆者自身の姿が「威張ることの好きな男達」の中に、彼等と同様に見えるような気がするのは、はたして私のトンデモナイ誤読でありましょうか。

 丸谷才一の作品の面白さは、明治以降長く近代日本文学史で描かれ続けた、べたついた「私小説」の苦悩に満ちた求道的小説観から決別し、知的なスリルに満ちた作品展開こそがその持ち味であります。
 そして、そんな意味でいいますと、決しては本作も今までの作品にひけを取らない小説芸としての様々な工夫はされています。
 しかしどうなんでしょう、これは「ゲスの勘ぐり」でしょうか、筆者は晩年「文壇のドン」でいらしたとか。(そもそもこんな言い方が、極めて一方的ではありましょうが。)

 古来、あらゆる権威に対する批判性こそが客観性の王道でありますが、しかしそうあり続けるのは、なかなか難しいことであるのかもしれません。


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Last updated  2013.07.21 18:39:35
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