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近代日本文学史メジャーのマイナー

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2023.12.03
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  『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子(講談社)

 2022年の夏の芥川賞受賞作です。
 女性作家です。
 令和元年上半期から同5年上半期までの芥川賞受賞作家をちょっと調べてみたら、全部で12人いて、男女は、男4人女8人でした。

 いい割合ですよねー。国会議員の男女比もこのくらいになれば、国の政策も大きく変わるでしょうがねー。(閑話休題)

 男女を分けて考えることに意味があるのかと問われれば、私としてはあるんじゃないかと考えています。
 先日、夏目漱石の『野分』という小説を読んでいると、すでに漱石が文中で、文学は実生活の不如意こそが深化のきっかけである、みたいなことを書いているのに、少しびっくりしました。明治時代も後半とはいえ、近代文学のまだ揺籃期ですよ。さすが漱石と、かなり感心しました。

 で、令和になってから(遡ればそれ以前からもけっこう確認できましょうが)、女性作家が花盛りというのは、女性たちの置かれている社会状況が相変わらずひどい(男もひどいでしょうが、もっとひどい)という事でありましょう。

 さて、わたくしこの度本書を読みました。
 単行本の帯にこう書かれて売りました。

 「心ざわつく職場小説」

 ……なるほど。
 そういえば、芥川賞受賞作だけではなく若い女性作家の作品として、私もなんかたくさん「職場小説」を読んでいるなあという気がしました。
 若い男性作家の職場小説は読んでないのかと思いだそうとしましたが、浮かびません。
 読んでないのか、印象に残らないのか。

 単行本の帯の裏表紙に当たる部分には、こんなフレーズがありました。

 「ままならない人間関係を、食べ物を通して描く傑作」

 ……また、なるほど。
 (話は飛ぶのですが、わたくし、本書について情報を最初に得た時に、このタイトルって、どうよ? と思いましたが、読み終えてもやはり思っていますー。)

 女性社員の、職場での「人間関係」、ですか。
 ネガティブにあれこれ想像詮索するのをやめて少し考えてみると、このあたりは確かに売れ筋のような気がしますよね。
 だって、いわゆる「純文学」っぽい現代小説なんか、まっとうな成人男性は読まんでしょう。(すみません、この部分はジョークのつもりで書いてます。よーするに私なんかは「まっとうな成人男性」じゃないという自虐ネタです。それだけの意味。)
 本書を買った人は、きっと、ほぼ女性ですよ。

 というわけで、作品内容の報告になかなか入りません。
 ただ、こうして書いていることが、あながち作品内容に無関係だというわけではないつもりで書いております。

 上記にありますように、私もぼつぼつと若い女性作家によるわりと新しい「純文学」現代小説を読んできまして、そしてこの度さらにそこに一冊を加えて、それらの作品群をざっくりこんな感じにグループ分けしてみました。

 1.いわゆる「こじらせ」サイコ系
 2.シュール変身譚系
 3.元の木阿弥「小確幸」発見系

 いかがでしょう。なんとなく分かってもらえますでしょうか。
 なんとなく分かりますよねえ。
 で、本作はどれに当たるかと考えると、ちょっと、うーん、と考えて、やっぱり「こじらせ」サイコじゃないか、と。これはどう考えても「小確幸」発見とは言えないだろうし、またシュールとまでは言えない擬似ハッピーエンド(私は終盤はやや失速したように思いました)じゃないかな、と。

 と、グループ分けをしたところで、私はさらにこんな風に考えました。
 しかしそもそもこれはリアリズム小説でもなかろうし。

 例えば、けっこうたくさんの章分けをしてこの物語は進んでいくのですが、終盤前までは、章ごとにいわゆる「人称」が変わっています。一人称文体の章と、三人称ではありながらほぼ特定の人物に寄り添って書かれている章が、交互に描かれます。

 あえてその狙いを想像すると、人物の立体化の工夫というのがまず浮かびますが、それより、作中の誰の心理をその時の謎とするのかの効果あたりかな、と思います。

 その工夫が面白くないとは言いませんが、ストレートなリアリズム描写はできないのかな、それとも、そんなリアリズム描写は今は時代遅れになっているのかな、本当にそうなのかな、などと思います。

 さらに「リアリズム」というのなら、作品終盤のお菓子を巡るエピソードなどは、終末につながる最大のエピソードながら、これは、リアリズムとはいえんでしょう。(私はそう思いますが、違いますか?)

 では、結局本作は何が描かれていて、そして、芥川賞受賞作でありますから何が高く評価されたのだろうか、と。

 わたくし、じーと考えたんですけれどね。
 ひょっとしたらと、思ったんですけどね。

 これは実験室の実験装置の中の人間心理の分析と表現じゃないのか。

 そう思うと、読んでいて確かに、上手な心理分析だなあとか、うまく心理を表現しているなあとか感じるところは多くあります。(それはまあ、何といっても芥川賞受賞作ですから。ただ、ここはスベッたかなと感じるところも……。)

 ただ、ここまで思って、もし、芥川賞的評価基準がこれに近いのなら、今更ながら少々あやうい気もしました。
 まあ、そんな基準ばかりではないでしょうが、もしこの基準一辺倒なら、山は高くなってもすそ野はどんどん狭くなっていきそうです。
 素人のくせにといわれましょうが、現代美術とか現代クラシック音楽などは、そんな状態に陥っているのじゃないのでしょうか。(あるいは、現代詩なんかも?)

 ……いえ、まあ、そこまで考えることもないのでしょう。
 なるほど、女性の職場の人間関係はいろいろ大変だ、「心ざわつく職場小説」と、そう納得させる小説でありました。


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Last updated  2023.12.03 14:12:05
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