藤森成吉作品の舞台
小説家藤森成吉の作品「若き日の悩み」(原題は波)は昭和26年の出版。東京の青年が大島にやってきて旅館の若い女性に恋心をいだく、そういうストーリー。その旅館は久世屋となっているが、元町(当時元村といった)にあった千代屋が舞台で、旅館の家族や理学博士として三原山の調査をされていた中村清二先生も登場している。本は2度読んだ、今興味あるのは青年を受け入れた旅館の主人であった人の孫(60歳代の男性)が当時の島の暮らしぶりや登場人物に関心を持って調べているということ、小説だとしても祖父母が頻繁に物語に登場している。昨日ボロボロになった「若き日の悩み」の2刷版の古い文庫本を持って私の所に寄ってくれた、途中の4ページが無くなってしまっているのでコピーしてくれないか、という話。もしかして孫の出生に関わる記述で故意に破ってしまったのかも知れませんね、といって4ページ分を渡した、この推測が当っているのかどうか。藤森氏ご健在の昭和50年にはご自身の揮亳による「若き日の悩み」の記念碑が大島湯場の小高い丘に建てられた、その2年後に作家は永眠されている。作品が生み出されて50年以上が経っても、作品はこうして代々にずっと生き続けている。