カテゴリ:美味しいお店
『 大阪料理 淺井 』episode 2 の続きです。
お店の大将にお料理のおまかせのオーダーをした。 この頃になると… やや緊張気味であったが少し雰囲気にも慣れてきた。 カウンターの向こうは、調理場である。 カウンター越しに隠れている調理場はよく見かけるが…。 淺井は違う! 堂々としている。 …というか…ほとんど丸見えである。 少し淺井のオーラに圧倒され気味だった僕も次第に平常心に戻り、まわりが見えてきた。 大袈裟な表現になるが、闇夜に眼がなれてきた様な感じですらある…。 調理場には、10~12人の板前さんがテキパキと小気味良く動いている。 人数が正確に把握できないのは、数を数えられない訳ではない。 見え隠れする板前さんがいるのだ。 まるで木の葉隠れの術とか… 分身の術を使えるのではないかと錯覚してしまうかのように。 凄い! これぞ調理場の中の調理場! そんな表現がピッタリとくる感じ。 すべてのスタッフに無駄な動きが全く無いようにみえる。 目を見張るほど、キビキビと一糸乱れね動きというのは、こういう事をいうのだろう。 板方、焼き方、煮方など… 整然と各2~3名づつが配置され、次々と料理があがっていく。 素晴らしい! 煮方の前が、大将が陣取っている場所である。 そう、長いカウンターのほぼ中央。 ここから、すべての指示が出ている様子。 (淺井には、2階、3階と個室などの客室があるようです。2階、3階には足を運んでおりませんので、その雰囲気等はわかりません) お玉の上に小皿を乗せて… 「お願いします」と後ろから大将に声をかけている。 大将に、煮方の若い衆から味見が渡っているのだ。 その時々に…小さく頷いたり、大きく頷いたり、一言コメントを入れたりしている。 若い衆の眼は、真剣そのもの。 殺気すら漂うほどに真剣な眼差しで、大将の反応に全神経を集中させているのがみてとれる。 程なくして、大将が自ら持ってきて頂いた一皿目。 大将、自らである! 感激ではないか! 「鱧(はも)の焼き霜造り」です。 …と言葉少なに大将が皿を供してくれる。 僕のななめ後ろに、先程のサービスの若い衆がそれをサポートする。 下皿の上にガラスの器 そして氷をあしらった上に、つまものをあしらい、皮を焼き炙ってお造りになっている鱧が上品にのっている。 『Oh! My God! 大阪料理とは、京の流れをしっかり押さえた上品極まりないお料理ではないか!』 お手許(箸)を割り。 鱧を口の中に運ぶ。 『新鮮な鱧、そして冷たい! 完璧だ! それにしても、この上品さは、気品ただよう香りがする。それにつけくわえて繊細な味わいだ』 心の中に味が染みわたってゆく。 美味しさと嬉しさで、自分の頬が自然とほころんでいるのがわかる。 焼いた鱧の皮の香り… 目を楽しませる妻物が口の中でシャキシャキとしている。 ひと品目もあと一口となった時。 カウンター中央に何気に目を向けた。 大将の目元が緩んでいる。 笑みが浮かんでいる。 笑っているのではない。 僕が、一皿目をいかに楽しんだかをつぶさにわかっているのだ。 達人だ! 達人とは今の時代。 TVのCMをみれば… インスタントラーメンの世界にも沢山いる。 そんな、軽々しい達人とは訳が違う! あれを達人というならば… ここの大将は、そんなのを軽く超えた仙人なのかもしれない。 いーや! そんなのと比較することは、失礼極まりないことなのだ。 *-*-*-* なんだか嬉しさが込み上げて来る。 大阪梅田の『The Westin Osaka ウェスティン・ホテル』にチェックインし… 大阪の賑いを肌で感じたいと、とりあえず難波まで足を運び。 久しぶりの大阪に嬉しさを感じ… 心斎橋付近で美味なる食を求めていたのだが…。 ガイドブック等を持ち歩いている訳もなく。 感だけが頼りで、こんな素晴らしいお店に出会えたのだ。 こんなにも素晴らしい調理場を肌で感じ… そとめからでも拝見させて頂き… 料理も文句無く美味い! 感無量という言葉は、こういうことだろう。 2年経った今でも、これだけ鮮明に憶えているお店は、全くと言っていいほど記憶にない。 *-*-*-* ひと口残っていた鱧を口に運び、お手許(箸)をそっと揃えて箸置きに静かに置く。 背筋を伸ばし、手を静かに太ももの上に…。 自然とあごを引いて眼は静かに正面に…。 …と。 正面を向いた時! 笑みを浮かべた大将が、次なるお料理を持ってきている。 すかさず、後ろからサービスの若い衆が、食べ終わったひと皿目を下げてくれる。 まさに阿吽の呼吸。 自然と軽く会釈をしてしまう。 絶妙という言葉は、この瞬間のためにあったのだと気付く。 二皿目、三皿目と進んでゆく。 『 大阪料理 淺井 』episode 4 に続く… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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