十五歳の僕と十四歳にして名探偵のルンババは、家も隣の親友同士。中三の修学旅行で東京へ行った僕らは、風変わりな姉妹と知り合った。僕らの冒険はそこから始まる。地元の高校に進学し大学受験―そんな十代の折々に待ち受ける密室殺人事件の数々に、ルンババと僕は立ち向かう。
舞城王太郎さんの「世界は密室でできている。」を読みました。
今作は講談社ノベルス20周年記念企画「密室本」の1冊でページ数自体は250ページ位と少なめなのですが、これでもかという位に本格ミステリのアイディアが詰め込まれています。
当然、メインとなるのは密室なのですが、それ以外にも事件を出したかと思えば探偵役であるルンババ12がサラリと解決してしまうサービス精神には嬉しくなってしまいます。
ただ、作品の本質はあくまで青春小説にあり、思春期の随所で語り手の僕とルンババ12が遭遇する事件を通して成長して行く過程が描かれています。
独特の文体で描かれているものの構成的には「煙と土と食い物」と比べて至極真っ当で、きっちり「家族」や「友情」といったテーマを織り交ぜているので読後感は良いです。
ミステリ部分の解決も含めて展開の速さは好き嫌いありそうですが、ミステリ要素を二の次と言えるだけの何かを持った作品に間違いないと思います。
今作からでも楽しめますし、ページ数も少ないので舞城作品への入門としても合っています。
気になるのは「煙~」で登場したルンババと本作のルンババの関係で、今作は「煙~」と陸続きの作品・・・という感じではないですよねぇ。
ならば三郎が描いた作品という設定なのでしょうか??
作中に登場した密室の持ち主の名前の位置付けも気になりますし、他のシリーズ作品も読んでみなければいけないですね。