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2008年09月18日
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カテゴリ:政治問題
 ジャーナリストの本多勝一氏は、「週刊金曜日」8月29日号で笠原十九司著『「百人斬り競争」と南京事件』(大月書店)に関連して、次のように述べている;


 このたび新著『「百人斬り競争」と南京事件』(大月書店)を刊行した都留文科大学の笠原十九司(かさはらとくし)教授は、1944年すなわち日本敗戦の前年生まれだから、戦争中はもちろん戦後しばらくの日本の具体的風景を体験的に認識してはいないだろう。その笠原氏が中国の近現代史、ひいては南京事件に強い関心を抱いてその分野の専門家にすすんだ動機は、学生時代のベトナム反戦運動にあった。

 ベトナム戦争は、アメリカ合州国という現代最大の帝国主義の侵略性を世界にようやく明確に認識させ、しかもそれを初めて敗北せしめた世界史上の大事件だが、これには当の合州国や米軍基地のある日本も含めて世界的に広範な反戦運動がもりあがったことも大きな特徴だった。反戦運動はとりわけ学生の間で全国的な大波となり、この時期に生涯の方向を定めた例が実に多い。

 笠原氏もその一人だった。ベトナムでの米軍のやりくちを知って、それでは中国で日本軍は何をしていたのかに注目しはじめたという。その結果が、のちの笠原氏の著書でいえば南京大虐殺に関連する『アジアの中の日本軍』『南京事件と三光作戦』(いずれも大月書店)とか『南京事件』『南京難民区の百日』(いずれも岩波書店)、『南京事件論争史』(平凡社新書)、『南京事件と日本人』(柏書房)、『体験者27人が語る南京事件』(高文研)となったのである。

まぼろし派は敗退

 笠原氏よりひとまわり年長になる俺の場合も、ベトナム戦争が生涯の方向への曲がり角になった点は共通している。あの『極限の民族』(朝日新聞社)シリーズで「カナダ=エスキモー」と「ニューギニア高地人」を発表したあと、すでに『第三次世界大戦』とさえ言われはじめたベトナム戦争への取材を編集局長(朝日新聞社)に申請したが、当時の局長から(もうひとつだけ)このシリーズをと命ぜられた結果が「アラビア遊牧民」(1965年)であった。

 その翌年の暮れから1967年の10月にかけて取材したベトナム戦争での米軍最前線と解放戦線(ルポ『戦場の村』)。これが、かつての日本軍を取材する発想に結びついてゆく。その結果たる『中国の旅』や『南京大虐殺』は、ジャーナリストとしての後半生の主要な柱となった。

 笠原氏の新著にちなんで連想するままにペンをすすめたものの、この本自体についても無論ふれておかねばならない。その序論で述べられているように、いわゆる「南京大虐殺論争(南京事件論争)」は拙著『中国の旅』で百人斬り競争にふれたことがきっかけとなっている。南京大虐殺を「まぼろし」や「虚構」と主張する否定派は、これを史実と証明する圧倒的な資料集や歴史書が出たため90年代半ばまでに学問的に敗退していた。しかし百人斬り競争それ自体についての解明は十分ではなかったため、敗退した否定派は巻き返しをはかるべく、百人斬り競争を事実無根とする名誉毀損(きそん)裁判を起こした (2003年4月)。

 これで被告とされたのは俺のほか朝日新聞社・毎日新聞社・柏書房を含む四者、原告は百人斬り競争で死刑になった野田・向井二少尉の遺族である。しかし裁判は一昨年の最高裁判決で原告(遺族側)の敗訴が確定した。これらの経過については南京事件調査研究会編『南京大虐殺否定論13のウソ』(柏書房・1999年)、渡辺春己・星徹・本多勝一共著『南京大虐殺歴史改窺派の敗北』(教育史料出版会・2003年)、拙著『南京大虐殺と日本の現在』(金曜日・2007年)などを参照されたい。

 それにしても、改めて嘆息せざるをえない。百人斬り競争は今から71年前の事件である。このような明白な事件をめぐっての「論争」など、同じ敗戦国ドイツではありえない。ところが最高裁で確定した後でも、マスメディアでは否定派の『作品』が大量に出まわって、日本の恥を世界にさらしている。笠原氏のこの著書は、歴史学の立場からこの馬鹿げた恥さらし論争に「ひとまず決着をつけることができたという思いでいる。」(「あとがき」から)

 おわりに、第一章の最後の一文を引用しておきたい。 -「日中十五年戦争において、中国戦場に『何百・何千の野田・向井」がいて無数の『百人斬り』をおこない、膨大な中国の軍民に残酷な死をもたらしたということが、決して誇張ではないことが推察されよう。」


2008年8月29日 「週刊金曜日」716号 59ページ「貧困なる精神-決定版『「百人斬り競争」と南京事件』」から引用

 本多氏が指摘しているように、「百人斬り競争」があったことが裁判で明らかになったにもかかわらず、それを否定する出版物が出回るのは嘆かわしいことである。これは一重に日本人社会の民度の低さによるのではないだろうか。











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最終更新日  2008年09月19日 08時28分04秒
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