評論家の森田実氏は、通常国会が始まる前日の東京新聞でウソとデタラメの安倍政治を、次のように批判している；

　通常国会が２０日から始まる。昨秋発覚した「桜を見る会」の問題は一向に説明がつかず、成長戦略の柱だった「カジノ」は汚職事件に発展。トランプ米大統領の言うがままに武器を爆買いする一方、庶民の生活は苦しいままだ。国会で問われるべき問題は多いはずだが、日本の戦後政治に直言してきた政治評論家・森田実氏（８７）はどう見ているのか。「史上最長政権」に物申す。（石井紀代美）


　静かな音楽が流れる東京・四谷の喫茶店。グレーのスーツにハットをかぶり、ステッキを携えた森田氏と落ち合った。穏やかな表情と丁寧な言葉遣いに人柄がにじみ出る。だが、政治の話になった途端、金縁眼鏡の奥の目が鋭くなった。

　「今の政治は失ってはいけないものを失っている。それは国民とのつながり、信頼です。それがなければ政治は成り立たない。おかしなことをしておきながら説明せずに逃げる。うそにうそを重ねるような自己弁護。通常国会でそんな政治に終止符を打たなければならない」。手でテーブルをトントンとたたきながら、言葉を紡いでいく。

　念頭にあるのは「桜を見る会」の招待客名簿廃棄問題だ。公文書管理法では、管理簿に記載した上で、廃棄する場合は首相の同意を得なければならない。しかし、２０１３～１７年度の名簿は、いずれの手続きもなしに廃棄された。

　「明らかな法律違反。さらには国家公務員法違反の行為でもある。国会から報告を求められたら報告しなきゃならんことを自ら消しちゃうわけです。どこか国民も大目に見ている感じもするけど、それはよろしくない。国会でしっかり追及してほしい」

　有権者が政治にがっかりさせられる出来事はこれにとどまらない。統合型リゾート施設（ＩＲ）に絡む汚職事件が起き、収賄容疑で衆院議員の秋元司容疑者が逮捕された。河井克行・前法相と妻の案里参院議員は、選挙とカネを巡る問題で捜査当局から地元事務所が家宅捜索を受けた。昨秋には、菅原一秀・前経済産業相が公選法が禁じる寄付行為疑惑で辞任している。

　森田氏の声に力がこもる。「イギリスの歴史家、ジョン・アクトンは『絶対的権力は絶対的に腐敗する』という言葉を残している。戦後日本の長期強大内閣もまさにその通り。政権末期かその直後に大きな腐敗事件が出てくる」

　例えば、吉田茂内閣（１９４８～５４年）では、５３年に「造船疑獄」が起きた。戦後復興のために政府が出資する計画造船の割り当てを巡り、造船会社が政治家や官僚に賄賂を贈った汚職事件だ。中曽根康弘内閣（８２～８７年）でも、水面下で政治家らに未公開株が渡される「リクルート事件」が発生した。

　「長期強大になってくると、権力でもってさまざまな問題の抑えが利くようになる。そうして政治の構造自体が腐敗する。安倍内閣も今、戦後に繰り返されてきたことを大掛かりに繰り返そうとしている」

　森田氏は表情を曇らせつつ先行きを占う。

　「政治の道徳的退廃。これにけじめをつけることが今の政治の中心問題になってきた。今年は東京五輪の後に不況が深刻化するだろう。世の中の不満が強くなり、内部告発が増える。まだまだ腐敗が出てきそうだ」


　もりた・みのる　１９３２年、静岡県伊東市生まれ。東京大工学部卒。日本評論社出版部長などを経て政治評論家として独立。東日本国際大の客員教授も務める。

２０２０年１月１９日　東京新聞朝刊　１１版　２８ページ　「最長政権を斬る」から引用

　一昔前の自民党政治は、最低限の矜恃として「国民の信頼を失ったら終わりだ」というモラルがあったが、現在の安倍政権の場合は、「信頼」などというものはどこ吹く風とばかりに、自分の支持者だけが「国民」で批判者に対しては「こんな人たちに負けるわけにはいかない」などと敵視する有様で、疑惑が持ち上がればさっさと「証拠の文書」を処分して、見えないのだから「証拠はない」と開き直り、ＰＣに残っているファイルを復元すればいいものを「そういうことはしません」で押し通す姿勢である。こういう「無法者」には、どう対応して民主主義を守るべきか、野党も国民も考え直す必要があると思います。