幹部を含む自衛隊員が公用車を使って靖国神社に集団参拝したという違法行為について、弁護士の内田雅敏氏は13日の朝日新聞に、次のように書いている;
陸上自衛隊や海上自衛隊の幹部を含む自衛官らが、靖国神社へ集団参拝していたことがわかった。憲法の政教分離原則に違反する行動だ。
陸自では、小林弘樹陸上幕僚副長(陸将)が自衛官ら数十人と靖国神社に参拝した。公用車を使用し、陸自の担当部署が実施計画書を作成していた。時間休を取っての「私的行為」と弁明するが、「私的行為」に公用車使用はありえない。
防衛省は、宗教の礼拝所を部隊で参拝したり、隊員に参加を強制したりすることを禁じた1974年の事務次官通達に抵触する可能性があるとして調査を開始した。1月26日、小林副長らの参拝は私的行為で前記通達に反しないとし、公用車の使用は不適切だったとして小林副長ら3人を「訓戒」処分とした。身内に大甘な「処分」だ。自衛隊のシビリアンコントロールは機能しているか。「背広(文官)組」が自衛隊「制服組」に忖度(そんたく)していないか。
小泉純一郎首相〈当時〉はかつて、靖国神社参拝を批判され、伊勢神宮の参拝は批判されないのにどうして靖国神社の参拝だけが批判されるのか、とうそぶいた。首相の伊勢神宮参拝も靖国神社参拝と同様、政教分離原則に明確に抵触する。靖国神社参拝は政教分離原則違反だけでなくさらに重大な問題をはらむ。
戦前、靖国神社は、日本の軍国主義を支える精神的支柱として陸・海軍省の所管する国家施設だった。敗戦で解体され、一宗教法人となったが靖国神社は、現在もなお日本の近・現代における戦争をすべて正しい戦争であったとしている。神社発行の「やすくに大百科」は「戦争は本当に悲しい出来事ですが、日本の独立をしっかりと守り、平和な国として、まわりのアジアの国々と共に栄えていくためには、戦わなければならなかったのです」と説く。世界に通用しない、国内歴代政権の公式見解に反する特異な歴史観を掲げる靖国神社に、自衛隊という「実力組織」の幹部らが組織的に参拝しているという事実そのものが大問題だ。
そんな靖国神社について、「台湾有事・日本有事の危機感が高まる中、自己の死生観に磨きをかけている自衛官諸氏も多いことであろう。その中には、いざという時は靖国に祀(まつ)ってもらいたいという、私と同様の気持ちを持つ自衛官もいるものと思う」(岩田清文元陸上幕僚長、1月31日付産経新聞)と元陸自トップの言説が堂々と語られる。小林陸幕副長らに対する処分と併せ、靖国神社との距離感を欠く自衛隊幹部やOBらの在り様に危惧を抱く。
<うちだ・まさとし 弁護士>
2024年3月13日 朝日新聞朝刊 13版S 15ページ 「私の視点-靖国神社との距離感、危惧」から引用
陸自幹部は白昼堂々公用車を使って集団参拝をしておきながら、問題を指摘されると「時間休を取った」だの、命令したのではなく自発的に参加した「私的行為」だのと、まるで自民党議員並みの取ってつけたような「言い訳」をして、それで済むと思っているらしく、問題意識のなさは素人並みで、こういうレベルの人たちに「国防」などという仕事ができるのか心細い限りである。朝日新聞も社説などで通り一遍の批判をして終わりではなく、ひろく国民に向けて警鐘を鳴らすキャンペーンをはるような努力をしないと、またぞろ現人神が統治する「帝国」が復活するのではないかと心配です。