カテゴリ:読書感想
「仏領インドシナを舞台に15歳のときの、
金持ちの中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。」(表紙裏より) 映画は観ていないが、予告編の雰囲気に記憶があるので、 エロティックで妖艶な恋の物語だろうと思っていた。 ところがなんと哀しい可憐な少女の心。 そして文章の美しさ。 インドシナのメコン川デルタ地帯、靄と湿地とのけだるい空気。 愛人との出会いの迫力、愛人と過ごす時間の濃密さ。 そのひまに見え隠れする少女の家族。 その家族の精神のあやうさ、すさまじさ。そして、貧しさの原因。 文章が美しいと言ったが翻訳とて、言葉というより構成がいいのかもしれない。 一人称、三人称と自在に変わり、情景もめくるめく、時も行ったり来たり、 まるでデュラスが思い出を思いつくまましているようにみえて、 しかし、印象深い作者の思索。書きたい意欲。みずみずしさ。 作者これを書いたとき60歳だったのだ! もうひとつ。 この本の表紙、18歳の美少女が作者自身で、 みかえしの老いた作者のお顔をみて、のけぞってしまった。 そこで、この小説唯一の鍵括弧文、(本文には「...」がない) ある男に話しかけられた。 「以前から存じ上げてます。若い頃はおきれいだったと、みなさん言いますが、 お若かったときよりいまのほうが、ずっとお美しいと思っています。 それを申しあげたかった、若いころのお顔よりいまの顔のほうが私は好きです、 嵐のとおりすぎたそのお顔のほうが」 が強烈に胸をうつ。 「18歳でわたしは年老いた...」というフレーズが。 デュラス、解説によると難解らしい。でも読みたくなるではないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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