☆彡 舞 妓 水 揚 げ 殺 人 事 件 ☆彡
暖かいお正月だった。
画家の沢木潤一郎は、久しぶりに、祇園のお茶屋に
行くことにした。
なじみの舞妓、小菊にも会いたかったし、東京から、先輩の
画家が来たので、祇園に案内しようと思ったのである。
川口という先輩画家と、料亭で食事をすませてから、お茶屋に
行ったが、小菊はなかなか来なかった。
売れっ妓なので、いくつかの座敷を廻っているのだろう。
「 遅おすなあ。もうちょっと待っとくれやっしゃ。
さあ、あんたら、何かしてお遊びやす 」
おかみがいうと、先に来ていた3人の舞妓が、テーブルの
まわりに集まり、ゲームをはじめる。
こんなときに、舞妓たちと遊ぶ、お座敷ゲームは、色々ある。
一人が、輪の外に出て鬼になり、あとのものが、歌をうたい
ながら、コインまわしをて、歌が終わったときに、誰の手の中に、
コインが入っているかあてるものや、こよりを、下唇の下に
はさんで、隣りにまわして行くゲームなどもある。
今日は、「迷惑拳」というゲームだった。
鬼を一人作り、「ワン・ツウ・の5」とか10と叫ぶ、そのとき、
一人が、片手をあげれば指の数が5本なので5、
二人挙げれば、10というふうに、数える。
鬼以外は、その場の気分で、手をあげたり、あげなかったり
するから、数は、さまざまである。
鬼の叫んだ数と、手が合えば、鬼の勝ちで、罰として、
お酒を、鬼の隣りの人が飲まなければならない。
罰として隣りの人が飲まないといけないので
迷惑拳というのだ。
普通の家庭で、お正月に、子供がたちがやっているような
単純なゲームなのだが、舞妓たちが、「きゃっ」とか
「わァ」とかさわぎながら一生懸命になるので、楽しい。
鬼が強いと、隣の舞妓は、何度も、お酒を飲まねばならず、
飲めない舞妓に、無理に飲ませるのが面白い。
沢木は、慣れているので、それほど熱中はしないが、
今日の客川口は、珍しいらしく、一生懸命だった。