まんがとあらすじで読む聖書
プロローグ~はじめに~
欧米文化の礎である「聖書」と日本人
日本にもキリスト教の信者はいるが、
その数は決して多くはない。
日本に伝えられたキリスト教は、主に
カトリックとプロテスタントだが、両方
を合わせても、信者の数は100万人程度
で、人口の1%にも満たない。
実はこれだけキリスト教徒の数が少ない国
は珍しい。先進国は軒並みキリスト教国だし、
サッカーのワールドカップで優勝したことが
あるのも、カトリックの国かプロテスタント
の国に限られる。
したがって、ほとんどの日本人にとって、聖書
は聖典ではないし、自分たちの信仰とは直接か
かわらない、ある意味ただの書物であるはずで
ある。
だが、私たち日本人は聖書とまったく関係をもた
ないわけではないし、それなりに強い関心をもっ
ている。聖書は、地球上に存在するなかで一番の
ベストセラーとも言われ、世界中で印刷され、読
まれている。聖書にふれたことがないという人も、
かえって珍しいだろう。
それに、アメリカのハリウッド映画を見れば、
聖書に関連した事柄がよく出てくる。
大ヒットした「ダ・ウ”ィンチ・コード」などは、
もろにキリスト教の信仰や宗教組織がからんで
いた。映画のなかに聖書の文句が登場すること
もあれば、聖書で語られた神話的な物語が、映
画のシナリオの下敷きになっていることも決して
珍しくない。
あるいは、ヨーロッパを旅してみれば、どこにも
キリスト教の教会がある。
そうした教会でも、あるいは美術館でも、聖書に
出てくるシーンを描いた宗教画に出会う。
「 聖母子像 」は、実に数が多いし、天地創造や
受胎告知など、聖書の物語を知らないと、その
意味を理解できないものばかりである。
近代化が進むなかで、先進国ではキリスト教の
信仰が衰退している面はあるが、聖書の物語は
現代でも生きている。
さらに、人々の考え方や思想の背景には、聖書
の強い影響ががある。
宗教とは一見関係がないように見える経済学や
経済思想の場合にも、ユダヤ教やキリスト教の
信仰が強い影響を与えている。
市場には神の見えざる手が働いているなどという
「市場原理主義」の考え方は、神を絶対のものと
して考えるユダヤ教やキリスト教の信仰ぬきには
成り立たない。
グローバル化が進むなかで、私たち日本人は、
海外の人たちと頻繁に接触するようになって
きた。
日本人は、自分たちでは強い信仰をもって
おらず「 無宗教 」だと言ってみたりするが、
海外の人たちは、自分たちの信仰を重視し、
物事を判断する際の基盤として、信仰に頼る。
その点では、海外の人たちの思考方法や行動
様式を理解するためには、その人たちの宗教
について知らなければならないし、なかでも、
ユダヤ教とキリスト教で共通の聖典となって
いる聖書についての知識は不可欠である。
( 新約聖書は、ユダヤ教では聖典として
認められないが、旧約聖書の方は、ほぼ
二つの宗教に共通する聖典と考えていい )
以 下 省 略
監修者: 島 田 裕 巳( しまだひろみ )
1953年 東京都生まれ。宗教学者、文筆家、
東京大学先端科学技術研究センター客員研究員。
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授
を経て、現職。
著書に「葬式は要らない」「戒名は自分で決める」
「無宗教こそ日本人の宗教である」「金融恐慌と
ユダヤ・キリスト教」「下り坂社会を生きる」
(共著)ほか多数。
発行年月日: 2010年8月20日
発行所: ㈱ 宝島社
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最終更新日
2021年01月09日 10時48分49秒
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